数年前、お客さん(大学生)と映画の話をしていた時のこと。
「メメントっていう映画、めっちゃおもしろいですよ!」
彼がオススメしてくれる映画はどれもおもしろい。
アマプラの「チェックリスト」に入れて、いつか観ようと思っていた。
ある日、何気なく映画館の上映スケジュールを見ていると「メメント」の表示が。
どうやら『2024年4月19日(金)より全国66館にて1週間限定でリバイバル上映される』とのこと。
このチャンスを逃してはイカン!と映画館へと走った。
鑑賞時の注意点
この映画を観る際、映画情報の検索など前情報ナシで鑑賞してもらいたい。
なにを見て、なにを知って、なにを考え、どう捉えるのか、なにが起きているのか、体験してもらいたい。
必要な情報といえば「10分しか記憶を保てない」「10分前の記憶が消える」これくらいだ。
あらすじ
保険会社の調査員だったレナードは、愛妻が殺されたショックでひどい記憶障害に陥った。
それは10分前の記憶を全て忘れてしまうというもの。
しかし事件以前の記憶は残っているため、彼の脳裏には妻が犯人に殺されるシーンが刻みこまれていた。
レナードは、そのわずかな手がかりを元に、妻を殺めた憎き犯人を捜し始める。
キャスト
左から、役名、人柄、俳優名。
レナード・シェルビー | 妻が殺害される現場を目撃したショックにより事件後は記憶が10分間しか保てなくなってしまう(前向性健忘)。 | ガイ・ピアース |
ナタリー | レナードを手助けする謎の女性。 | キャリー=アン・モス |
テディ | レナードに対して親しげで、たびたび助言や忠告、手助けをしてくれる。 | ジョー・パントリアーノ |
バード | レナードが泊まっているモーテルのフロント係。 | マーク・ブーン・ジュニア |
レナードの妻 | 殺害されたため回想シーンで登場する。 | ジョージャ・フォックス |
サミュエル・”サミー”・ジャンキス | レナードと同様、事故により前向性健忘を患っている。 | スティーヴン・トボロウスキー |
ジャンキス夫人 | サミーの妻、前向性健忘を患っている夫との関係に疲れている。 | ハリエット・サンソム・ハリス |
ドッド | レナードを襲う謎の男。 | カラム・キース・レニー |
ジミー | ナタリーの恋人。 | ラリー・ホールデン |
タイトルの意味
メメント、英題はMemento。
memento | ラテン語 | 思い出の品、形見、記念品 | 過去の出来事を思い出せる物 |
レナードの記憶障害(前向性健忘症)
レナードは「前向性健忘症」という記憶障害を患っている。
愛する妻を殺害されたショックによって、記憶障害を患っている。
事件より以前のことは覚えているが、事件以降は「新しく記憶する」ことができなくなった。
レナードが記憶を保っていられるのは「10分」だけ、10分経つと忘れてしまう。
健忘症の特徴は、忘れていることに自分自身が「気付いている」こと。
冒頭のシーン
1枚のポラロイド写真。
飛び散っている血痕、凄惨な現場を撮影した写真。
手に持つ写真をパタパタとあおぐ。
なぜか少しずつ写真の色が失われていく。
どういうことだ?観客の脳内には疑問符が浮かぶ。
完全に白くなった写真。
その写真の動きが意味するものとは…。
複雑な構成
時間を自在に操る監督、この作品も複雑な構成をしている。
「カラーパート」と「モノクロパート」が交互に映し出される。
カラーパート
現在の時間。
レナードの日常と、目的である「犯人捜し」のパート。
主観的視点。
モノクロパート
過去の時間、現在よりも少し前の過去。
過去の回想なので解説に近い。
客観的視点。
キーワード
いくつか重要なポイントがある。
これらをヒントに、真相に近付いてほしい。
ポラロイド写真
ポラロイドカメラで撮影した写真。
だれが、どこで、なにを撮影したのか、重要なアイテム。
メモ
10分しか記憶できない記憶障害を持つレナード。
忘れないように大切なことはメモしている。
サミー
レナードと同じ記憶障害を持つ男性、名はサミー。
レナードは頻繁にサミーの話をする。
ガイ・ピアース:レナード役
レナード役のガイ・ピアース。
彼の圧倒的な演技力があるからこそ、この作品は一層素晴らしくなっていると思う。
10分前と10分後、それを瞬時に使い分ける高い演技力。
細やかに変化する表情、醸し出す雰囲気の使い分け、声と行動と仕草の微妙な変化、どれをとっても素晴らしい。
ガイ・ピアースの演技によって、10分前のレナードと10分後のレナードは別人になっている。
この「10分ごとに別のレナード」が観客をさらに惑わす。
クリストファー・ノーラン監督
「時間」を巧みに自由自在に操るクリストファー・ノーラン監督。
今までにも「時間」をテーマにした作品は多々ある。
いま現在上映中の「オッペンハイマー」もまた、過去と現在が入り混じった作品。
「メメント」の同じ【カラーパート】と【モノクロパート】で構成されている。
最後に
ネタバレなしで記事を書くとコンパクトになってしまう。
そうならざるをえない理由は、すべてのシーンにおいて「情報」を持っているからだ。
その情報は、ネタバレになってしまうくらい重要なもの。
前半で植え付けられた私の「思い込み」は見事に打ち砕かれた。
その「思い込み」によって鑑賞していくと、見え方も変わるしストーリーも変わる。
どんな「思い込み」を持つのか、それによって「真実」が変化する。
しかし現実に起きた「事実」は変わらない。
そして、その変わらない事実というもまた思い込みである。
人の数だけ現実があるのと同時に、その現実は思い込みなのかもしれない。
【記憶とはただの思い込み、記録ではない】このセリフが刺さる。
素晴らしい作品に出会えて本当に良かった、感謝。
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