2024年5月2日、スマホのニュースアプリの配信を見て、驚きのあまり固まった。
フライヤー
映画館でこのフライヤー(チラシ)を発見したときは、飛び上がるほど嬉しかった。
あの美しい音を、もう一度聞ける。
そう思うと公開日が待ち遠しかった。
恋するピアニスト フジコ・ヘミング
フジコは子どもの頃、寝床に着くと聞こえてきたのは、母が弾くショパンの「ノクターン」。
その音楽に魅了され、ピアノに触れた時から、フジコの音楽の旅が始まった。
数奇な運命をたどり、世間から注目されたのは60代後半。
いくつもの苦難が訪れても、フジコはピアノを弾くことを決してやめなかった。
上映劇場
感想
コロナが始まる少し前から撮影が始まる。
フジコ・ヘミングという人を記録したドキュメンタリー。
まるで共に生活をしているような感覚になる。
そのくらい、とても近い位置で撮影している。
音の美しさ
どの音もとても素晴らしい。
ポーン、とピアノの音が弾む。
とたんに、グッと込み上げてくる。
鼻の奥にツンと痛みが走り、感情が震えて、涙が出る。
まぶしい。
彼女が奏でる音は、どれも煌びやかでまぶしい。
音のしぶきを弾ませ、音が耳に届くと、自然に視界を奪われる。
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませ、体で音を聞く。
まぶしい。
あまりのまぶしさに目を細める。
どこで、どのピアノで、どんな曲を奏でても、音は等しく優しい。
彼女の手は、鍵盤を撫でるように音を弾ませる。
まぶしい。
楽曲
映画には12曲、ピアノ演奏している。
その中でも特に私が好きな曲をいくつか。
公式YouTubeチャンネル
不思議な事
不思議なことが私に起きた。
ピアノの音を聞いて感涙する、これは予想できたし実際そうなった。
いちばん泣いたのは、ピアノの音ではなかった。
少女が吹くフルートでメロディーが始まる。
少女合唱団の愛らしい声で歌い上げるこの曲。
「故郷(ふるさと)」
うさぎ 追いし かの山 小鮒 釣りし かの川
夢は今も めぐりて 忘れがたき 故郷(ふるさと)
歌ネット:https://www.uta-net.com/song/13892/
もう号泣。
グッと堪えていないと嗚咽しそうなほど。
なにが響いたのか、わからない。
なにが刺さったのか、わからない。
なぜ泣いたのか、わからない。
この号泣したことを、普段お世話になっている人に告げると「魂のこもった音楽は感動のるつぼ、魂の浄化ですね。」とおっしゃっていた。
ものすごく腑に落ちた。
私の意識外にある、私の魂が、音楽によって共振共鳴、感無量。
思い出
「コンサートの日」と「私の休み」が偶然かさなることが数回あり、生演奏を聴くことができた。
片手で数えられるくらいの回数だけど、行けたことが本当に嬉しい。
何度かクラシックコンサートに行って感じたこと。
それは、ひとつの曲、ひとつの楽譜だけど、数多の弾き手によって「違う曲」になる。
「弾き手」によってこんなにも曲の印象が変わるだなんて、衝撃的だった。
音の形、音色、雰囲気、空気、音の圧力、気配など「見えない感覚」の印象が変わる。
ひとつの曲、指揮者が変われば曲が変わるように、演奏者が変われば曲も変わる。
演奏者が持つ感性と感情と表現方法が異なるからなのだろう。
イヤホンで聞くのと、会場で聞くのでは違う。
同じ曲だけど、何かが違う、説明しにくいけどハッキリと違う。
どれだけデジタルが発展しても、生演奏を再現することはできないのかもしれない。
鑑賞後に思ったこと
2022年5月4日公開の映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」。
しかし、モリコーネは公開日を待たずに2020年7月6日に逝去、91歳。
今回観た「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」も同じく、完成を前に逝去。
晩年を記したドキュメンタリー作品は、完成・公開を前に逝去することが多々あるのだろうか?
制作側は、この素晴らしい人物を記録と記憶に残し次世代に伝える目的として制作しているのだと思うが、どうにも残念でならない。
最後に
私はフジコ・ヘミングさんの「ラ・カンパネラ」が特に大好き。
いろんな人の「ラ・カンパネラ」聞いたけど、フジコ・ヘミングさんのは超絶好み。
音の形、音の余韻、1つ1つの音の鳴り方、言葉で説明しにくいけど音色が独特で超絶好み。
私の地元でソロコンサートがあって、フジコ・ヘミングさんの音を感じられたことを大変嬉しく思っている。
ありがとうございます。
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