ある日、何気なくTwitterを見ていたら、映画館アカウントの映画紹介を目にした。
なんなんだ、この映画は(笑)。
こちらのアカウントの「中の人」、文才あふれる素晴らしい文章で映画を紹介している。
映画紹介文が超絶好みで、投稿を楽しみに見ている(地元にあったら通いつめているレベルで大好き)。
あらすじ
2016年。
マイキー(サイモン・レックス)は、ポルノ映画のスター俳優だったものの落ちぶれてしまい、無一文の状態で故郷のテキサスへ舞い戻る。
別居中の妻:レクシーと義母:リルに煙たがられながらも、マイキーは彼女たちの家に居候させてもらう。
仕事を探すも、17年間ポルノ俳優をやっていたことがブランクとなって定職に就けない。
昔のコネを頼ってマリファナの密売で日銭を稼ぐ中、マイキーはドーナツ店で働く少女と出会い、彼女との交流を通じて再び前を向こうとする。
2016年のアメリカ・テキサスを舞台に、社会の片隅で生きる人々の姿を鮮やかに描いた、ひとクセありのヒューマンドラマ。
キャスト
マイキー・セイバー | サイモン・レックス | 元ポルノ俳優 | 2000本のビデオに出演し、賞レースでは受章6回、13ノミネート。ポルノ界のアカデミー賞「AVN」は5回逃している。チャンネル登録数は900人弱。 |
レクシー | ブリー・エルロッド | マイキーの妻 | AVN受賞経験ありの元ポルノ女優。テキサスに戻ってからは実母:リルと同居。マイキー以外の男との子供がいるがドラック中毒で息子に会えない。 |
ストロベリー | スザンナ・サン | ドーナツショップのバイトスタッフ | あと3週間で18歳になる女子高生。退屈なテキサスシティを出て「好きなことで稼ぎたい」と思っている。 |
リル | ブレンダ・ダイス | レクシーの実母 | ★テキサスでタバコを吸いながら「私のトラックにエンジンをかけてくれる?」とベイカー監督に話しかけたことがキッカケで出演決定。 |
ロニー | イーサン・ダーボーン | レクシー宅の隣人 | ★テキサスのレストランで働くシェフ。ホラー映画の大ファンで背中にチャッキーのタトゥーを入れている。 |
ジューン | ブリトニー・ロドリゲス | レオンドリアの娘 | ★飼い犬チワワの散歩中にベイカー監督に声を掛けられ出演決定。 |
レオンドリア | ジュディ・ヒル | マリファナ家業の元締め | 劇映画は本作が初出演。2018年にロベルト・ミネルヴィーニ監督のドキュメンタリー「What You Gonna Do When the World’s on Fire?」に出演。 |
アーネスト | マーロン・ランバート | マイキーの高校時代の同級生 | 警備員、製油所、トラック運転手の仕事を掛け持ちしている。 |
★はテキサスシティの地元住民で一般人
時代設定:2016年
2023年から7年前、平成28年。
- SMAPのメンバー5人のうち木村拓哉以外の4人(中居正広、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)が、所属事務所のジャニーズ事務所を退社
- 軽井沢スキーバス転落事故
- 元プロ野球選手の清原和博がマンションの自宅にて覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯で逮捕
- 川崎老人ホーム連続殺人事件
- アイドルグループ「欅坂46」デビュー
- 相模原障害者施設殺傷事件
- 俳優の高畑裕太が強姦致傷容疑で群馬県警察に逮捕
- 藤井聡太が14歳2か月で四段昇段(プロ入り)を内定(史上5人目の中学生棋士となり加藤一二三九段が記録していた14歳7か月を62年ぶりに更新)
- 「週刊少年ジャンプ」42号にて秋本治の漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載終了(1976年9月21日発売の週刊少年ジャンプ42号からの連載40年に幕を閉じた)
- 元女優の高樹沙耶(本名:益戸育江)を大麻取締法違反(所持)の現行犯で逮捕
- 日本工業大学作品火災事故
- 博多駅前道路陥没事故
- NON STYLEの井上裕介が車で人身事故を起こし逃走
- 糸魚川市大規模火災
- フジテレビ系の長寿バラエティ番組「SMAP×SMAP」が放送終了(1996年の放送開始から20年の歴史に幕を下ろす)
- 2016年の音楽
- 2016年のテレビ (日本)
- 日本のテレビアニメ作品一覧 (2010年代 後半)#2016年(平成28年)
レッド・ロケットとは
レッド・ロケットとは、英語圏のスラングで「発情した犬のペニス」という意味。
この映画のタイトルにふさわしい単語だと思う。
Slang(スラング) | 日本語に直訳すると「俗語」 | コミュニケーションの中で使われる砕けた表現のこと | めっちゃ、やばい、イケてる、ビビる |
無一文無職中年のマイキー参上
バスに揺られて故郷のテキサスシティに舞い戻ったマイキー。
この街に来るのは実に17年ぶりのこと。
顔は傷だらけ、所持金わずか22ドル、どう見てもワケありのマイキー。
マイキーは、別居中の妻:レクシーの家を訪ねる。
サプライズだよ!オレがサプライズで来たよ!
どんだけポジティブなんだよ(笑)
何の前触れもなく登場したその男に驚きを隠せないレクシー&リル。
満面の笑みマイキーとの温度差は激しい。
いや~元気だったかい?(笑顔)
なに?なんなの?何しに来たの?!
オレも会いたかったよ~!(笑顔)
なに?マジで最悪なんだけど!
ははっ、オレも会えて嬉しいよ!(笑顔)
会話が成立していない、アンジャッシュのコントか(笑)
誰も待ち望んでいないし、なんなら迷惑がられて追い返されているから笑える。
テキサスシティ
アメリカ合衆国テキサス州にあるテキサスシティ。
石油精製や石油化学工業が中心の街。
作中でもたびたび工場群が映し出される。
絶賛就職活動中のマイキー
妻:レクシーの家に住みつきたいマイキーは、頑張って就職活動をする。
レストランや1ドルショップ(100円均一的な店)などに面接に行くも、履歴書に書いてある「長い空白の期間」を理由にうまくいかない。
しかたなく「ロサンゼルスでポルノ男優」を正直に告げるも、軒並み不採用。
世間の風当たりは意外と強い。
昔のツテを使うマイキー
近所でマリファナ稼業の元締めをしているレオンドリアのもとで、マリファナ販売の仕事を再開させる。
レオンドリアの娘:ジューンから「販売するときの注意事項」を言われる。
「そんなことするわけないじゃないか、大丈夫だって、任せろよ!」と言葉では理解を示しているけど実は右から左へ受け流して理解している風のマイキー(笑)。
このあたりで、マイキーという男がどんな人間なのかが見えてくる。
ベッドで安眠したいマイキー
しばらくソファで寝ていたが、どうにかしてベッドで眠りたいマイキー。
いがみ合う妻がすんなりとベッドを使わせてくれるはずない。
それなら「ベッドを使うこと」をすればどうにか潜り込めるはず。
考え出した作戦は「青い柿ピー」。
変なところで頭脳派なマイキー、自分の欲を通すための思考力はハンパない。
青い柿ピー
「青い柿ピー」このネタわかる人いるかな?
TBSドラマ「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」に(一瞬だけ)登場する。
野々村係長(竜 雷太)が愛用しているのが「青い柿ピー」である。
とっても元気になれる青い柿ピー、この映画でもたびたび登場する。
ドーナツ少女:ストロベリーと出会うマイキー
マリファナ販売で儲けた金で1ヶ月分の家賃を前払いしたマイキーは、お祝いにレクシーとリルをドーナツショップに連れて行く。
そこで出会うのは、若さと純粋さの結晶、いたいけな少女:ストロベリー。
白い肌にチャーミングなそばかす、幼い顔に真紅の口紅、少女のようで女性のような魅力が漂う。
同性の私が見ても「かわいい!魅力的!(エロさがある!)」と思うほど。
聞けば、あと3週間で18歳になる高校生だそうで。
おじさんマイキーは、すっかり夢中になる。
毎日ドーナツショップに足繁く通うマイキー、安っぽくてボロい自転車に乗って。
ストロベリーへのアプローチで「ロサンゼルスでエンタメ業をしてた」と話すマイキー、ウソは言っていない、ウソじゃない。
エンタメ業(ポルノ)、というだけ、うん、ウソじゃない(笑)。
口説くために頑張るマイキー
頑張る方向を見失っているマイキー、徐々に(物理的に)ストロベリーに近付いていく。
おじさんが必死で少女を口説く絵面は、見ていて少し恥ずかしいのと、やり方が実にセコくて笑えるのと、それらが入り混じって更に笑える。
ストロベリーの「友達:ナッシュ(男・18歳)」が登場して、さあ大変。
あれこれ頑張って彼氏ヅラするマイキー、ここめっちゃ笑った。
おっさん、なにやってんだよ(笑)
高級住宅地と自転車マイキー
ストロベリーはバイト先に車で来ている、どうやら母親の車を乗り回しているらしい。
ストロベリーのバイト終わりまで居座るマイキー、話の流れでマイキーの自宅まで車で送ってもらえることに。
大きな車の荷台に自転車を載せて、マイキー宅までドライブデート。
あれ?マイキーの自宅って・・・、妻:レクシーと妻母:リルが居るよね?
車中での会話はとても盛り上がり、終始楽しそうなストロベリー。
しばらく走るとマイキーは「家の人が起きてしまうからここで大丈夫だよ、ありがとう」と玄関先で降ろしてもらう。
あれ?マイキーの妻の家はこんな景色じゃないよね???
ストロベリーの車が見えなくなると、自転車を「自宅」へと走らせる。
おっさん、マジでなにやってんだよ(笑)
隣人:ロニー
レクシー宅の隣人:ロニーは、年老いた父と2人暮らし。
マイキーと話すようになり、マイキーの「ポルノ業界あれこれ」に興味津々。
調子に乗ったマイキーは、まるで武勇伝のように話をモリモリに盛って話すものだから、ロニーはすっかりマイキー信者になる。
そして、車を持っていないマイキーと一緒にあちこちにお出掛けする仲になる。
これがのちに悲劇をもたらすとは・・・。
デートにハシャぐマイキー
かわいいストロベリーと遊園地デート。
彼女を喜ばせようと頑張るマイキー。
楽しく遊園地をまわり、ジェットコースターに乗ったときのこと。
ストロベリーの言葉に、マイキーの時間が止まる。
「出演していたビデオ、見たわ」
「えっ」
「ポルノ映像よ、名前を検索したらヒットしたわ、ぜんぶ見たわ」
走り出すジェットコースター。
「きゃぁぁぁぁぁぁ♪」マイキーにしがみついて楽しそうに叫ぶストロベリー。
ロサンゼルスの俳優:マイキー、俳優は俳優でもポルノ俳優と知られてしまい顔面蒼白。
マイキーの顔、めっちゃ笑った。
男と女、そしてマイキー
自宅では寝室を使うためにレクシー相手に頑張るマイキー。
若くてかわいいストロベリーとの甘い行為に酔いしれるマイキー。
こうもバレないものなのか?と笑ってしまう。
一方がうまくいき始めると、もう一方を蔑ろにするマイキー。
ストロベリーとの時間が充実してくると、レクシーの誘いを断ったり、レクシー&リルに高圧的態度をとったり、暴言吐いたり。
何かが満たされると、何かを蔑む。
わかりやすいダメ男だな(笑)
なにもかもが順調な現実を前にして、マイキーは幸せを噛み締めている。
少しずつ、変化していることに気付かずに・・・。
ショッピングモールに行くマイキー
すっかり仲良しになった隣人:ロニーの車に乗って、郊外のショッピングモールへお出掛け。
口から生まれてきた口だけ星人:マイキーの話にすっかり魅了されるロニー。
帰り道、高速道路を爆走しながら楽しくおしゃべり。
テンション上がりまくったマイキーは、興奮しながらモリモリに盛って話す。
話に夢中で出口を通り過ぎてしまい・・・。
真の姿をさらすマイキー:その1
自宅前に車を停めるロニー&マイキー、どこか様子がおかしい。
顔面蒼白、挙動不審、精神不安定、車を降りたロニーは嘔吐する。
2人になにがあったのか。
それは、テレビに映し出されるニュースで知る事になる。
自宅でもどこか落ち着きがないマイキー、というか隠しきれないどころか全面的に出てるけど。
テレビの取材や警察の事情徴収など、ロニー宅は人の出入りが激しい。
さらに不安になる挙動不審のマイキー、それにまったく気付かないレクシー&リル。
ついに、ロニーが逮捕されてしまう。
いつ自分のところに捜査の手が伸びるのか、超絶不安な日々を過ごすマイキー。
テレビのニュースで「ロニーの単独逮捕」が報道される。
それを見たマイキーは、家を飛び出す。
庭に出て、両手で顔を覆い、泣きわめくマイキー。
と思いきや、渾身のガッツポーズ。
全力で抑えた歓喜の雄たけびを上げる「神様ありがとう!!!」。
ここでハッキリと露呈する、真正かつ高純度のダメ男であると。
露呈 | 隠しておきたかった事柄が明らかになるという意味 |
露見 | 悪事や陰謀などがバレるというニュアンスで使う言葉 |
ハイテンション暴走野郎:マイキー
ツイている、オレはツイている、運は味方したのだ!
ハイテンションなマイキーは、とんでもない暴挙に出る。
アルバイト中のストロベリーのもとに駆け込み、一緒にロサンゼルスでポルノの仕事を始めようと情熱的に誘う。
彼女はそれを笑顔で快諾し、その場でドーナツ店を群めてしまう。
その夜、帰宅したマイキーはレクシーに今までの無礼と感謝を述べて「明日カリフォルニアに発つ」と告げる。
ロサンゼルスではなく、カリフォルニア州と言うあたりがセコい(日本風にいえば、新宿と言わずに東京もしくは関東)。
突然の出来事に何が何だか理解できないレクシー&リル。
マイキー VS レクシー&リル、感情のままに言い合う。
明日のカリフォルニアに希望を馳せて、幸せそうに眠るマイキー。
に忍び寄る影が…。
スーツケース・ピンプ
返り討ちにあうマイキーに、レクシーが暴言を投げつける。
「スーツケース・ピンプ」
これはポルノ業界用語らしく、意味は「女性をポルノ業界に売り込んで利益を得ようとする男性」。
日本語訳だと「ポン引きヒモ野郎」。
ものすごい暴言で、しかも連呼するので、めっちゃ笑った。
真の姿をさらすマイキー:その2
ここでこの映画がR18指定なのがわかる。
夜の町を「全裸」でダッシュするマイキー。
モザイクなし、その部分を別のもので塞ぐこともなし、本当に全裸。
おっさんがチソチソを丸出しにして全力疾走、これ以上に強烈な絵面は見たことない(笑)。
しかもデカい(笑)、長い(笑)、鼠径部から膝までの長さの半分がチソチソ。
カメラに近付く形で撮影しているから、全裸おっさんチソチソが徐々にクローズアップされていく、ものすごく爆笑した。
ほかに観客が居なければ、手を叩いて大声で笑っていただろう、涙が出るほど笑った。
明日へ進むマイキー
文字通り「裸一貫」で放り出されたマイキーは、助けを求めてレオンドリアの元へ駆け込む。
慈悲の200ドルと、少量の荷物をゴミ袋に詰め込み、夜通し歩いてストロベリーの家へ向かう。
そこでマイキーが見たものは…。
このオチに「なんでやねん(笑)」と思わず言いそうになってしまった。
考察1
映画を観終わってから、マイキーという人物について考えてみた。
長くなるのでいくつかに分けて書いてみる(個人的視点による考察)。
- 猛烈に偏った思想の人
- 自分のことしか考えられない人
- 自己中どころの話じゃない
- ある意味サイコパス
- 自分の得しか考えられない
- しかも悪意がないから余計に厄介
- そのためなら他人を利用することに躊躇がない
- 他人を利用しているつもりは微塵もない
- 自分に不利益にならなければ周囲にどんな結果をもたらそうとも罪の意識も皆無
- 自覚していないから罪の意識すら持てない
- その場しのぎの都合良いことが言える
- それを「盛って話している」とは微塵も思っていないどころか事実(現実)と思い込んでいる
- 虚偽ではない、あくまで現実(思い込み)
- 利己的思想や利己主義
- 有害なほどに利己的
- 破壊的にナルシスト
- 周囲の人を無自覚に搾取
- 成功は自分のおかげ
- 失敗は誰かのせい
自分の弱さを自覚していない人は、自分を過大評価することが通常営業。
しかも過大評価しているとも思っていない。
考察2
- 本当の自分はこうじゃない
- もっとできるはずだ
- もっと評価されるべきだ
- 私は凄い
- 私は偉い
- 理想と現実の温度差が広がるほどより自分を理想化する
- そしてその理想を現実と強く思い込む
- 現実を見ないようにするために妄想に勤しむ
- 誰が聞いても「いや有り得ないだろ」と思うことを平気で事実のように伝える
これは虚言癖ではない、疾患にほど近い。
アイドルとの交際を思い込みアレコレと妄想を吹聴する、わかりやすい例。
考察3
- 自分に嘘をつくことが通常営業とも言える
- 本人は嘘をついている自覚ない
- ご都合主義で過大に物事を言っている自覚がない
ものすごく理解できる。
昔の自分を思い返すと「考察1・考察2・考察3の事柄」が当てはまる。
もしかしたら今の自分もそうなのか?
最後に
周囲の人たちはこんなにも騙されやすいのか?と思うほど、誰もマイキーを疑わない。
いやいや、よく考えれば有り得ないっしょ?!というところも受け入れる周囲の人たち。
そう思わせてしまうマイキーがすごいのか?
鑑賞後はめちゃくちゃ笑ったので「あーおもしろかった!」だった。
この記事を書くためにアレコレと考察していると、次第に鬱々としてくる。
理由は、マイキーのダメ要素を「私の中」に見つけてしまったから。
マイキーのようにならないように気をつけよう、と思ったが残念、すでにマイキーが私の中にある。
こうして第三者目線で客観的に鑑賞していると、マイキーと同じことを「私」がしていたのかと思うとゾッとするし、とても申し訳ない気持ちになる。
この映画はコメディではなく教科書、自分を第三者が演じてくれた教本。
自分の思考が、行動が、言葉が、マイキーにならないための大切な教本。
この映画を思い返して、自分を律して生きたい。
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