映画「シュガーマン ~奇跡に愛された男~」を観た感想

映画鑑賞の感想文

この映画を知ったのは、お客さんとの会話だった。

「シュガーマンっていう映画、知ってる?」

内容を簡単に説明してくれた、俄然がぜん興味を持った。

早速 DVDを注文、ワクワクする。

シュガーマン 奇跡に愛された男※セル版・ジャケット加工あり 日本語字幕

あらすじ

1968年、ミシガン州デトロイト。

場末のバーで歌っていたミュージシャン:ロドリゲスは、大物プロデューサー:マイク・セオドアの目に止まり、デビューアルバムを発表するが、商業的には大失敗に終わる。

世の多くのミュージシャンと同じく、彼もまた誰の記憶にも残らず、跡形もなく消え去った。

しかし、音源は運命に導かれるように海を越え、遥か遠くの南アフリカの地に渡る。

その後20年間、ローリング・ストーンズやボブ・ディランを超えるほど有名なアルバムになっていた。

なぜ、ロドリゲスの音楽は同時代のアメリカで無視され、南アフリカで熱狂的に受け入れられたのか。

そして、彼はどこへ行ってしまったのか?

地球の裏側で起こった奇跡が、男の人生を大きく変える。

これは、音楽の共鳴力に心打たれ、人生に起こる本当の軌跡に出会う珠玉のドキュメンタリーである。

2012年公開

2012年のスウェーデン・イギリスのドキュメンタリー映画。

日本公開 2013年。

アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した。

1968年

1968年、日本では昭和43年。

日本では何があったのか書き出してみる。

よく知る出来事や事件が多く見られる。

構成

前半はインタビューで構築されている。

場所は、アメリカミシガン州デトロイト。

1968年、当時を振り返りながら関係者がロドリゲスと出会った経緯を語る。

この項目以下は、ストーリーの流れに沿ってに書いています。

クルーシファイ・ユア・マインド( Crucify Your Mind )

この曲の歌詞は、当時のアメリカを反映しているのだろう。

ゆるやかなテンポで音が流れる、それぞれの楽器も優しい音をしているがどこか乾いたようにも聞こえる。

アニメーションから始まり実写へ移りゆく様子があまりにも自然で驚いた。

雪の深いデトロイト、そうか、デトロイトは冬が厳しい地域なんだと知る。

関係者はこう言う。

「彼はスラム街の詩人だ、街で見たままを歌詞にする」

ロドリゲスの目には、何が見えていたのだろう。

シュガーマン( Sugar Man )

シュガーマン = 売人

シュガー → ヘロイン

シュガーは砂糖ではない、いわゆる隠語というやつだ。

シュガーを売る人、要はヤク(麻薬)の売人。

彼は高めの声で、ヤクを取り巻く現実を歌う。

コーズ( Cause )

関係者が過去を振り返りながらこの曲を紹介している。

「とにかく悲しい曲だ」と。

音楽は社会を反映している。

景気が良ければ、明るくテンポアップな曲が売れる。

逆に景気が悪ければ、バラードやブルースなどのスローテンポの曲が売れる。

それは歌詞にも反映されていて、いわば心の叫びだろう。

音として、歌詞として、声として吐き出すことで、何かを乗り越えようとしているのかもしれない。

アイ・ワンダー( I Wonder )

少し明るい曲調で、少しテンポアップした曲。

何度も繰り返される「 I Wonder 」が耳に残る。

ここから舞台は南アメリカへと飛ぶ。

彼のLPが南アフリカへ来た経緯、それは「謎」。

諸説あるが、どう伝わったのかは全くの不明。

彼の曲が受け入れられたのは、当時の南アフリカの社会事情があったからだ。

しかも、ロドリゲス本人の情報が一切入ってこない。

LPジャケットの写真しかないので、ずっと謎の人物扱い。

彼の歌は瞬く間に広がり、反抗のシンボルと化した。

キーワードは「アパルトヘイト( Apartheid )

アパルトヘイト - Wikipedia

ザ・エスタブリッシュメント・ブルース( Establishment Blues )

当時の南アフリカ情勢を語る関係者。

南アフリカ政府は、あらゆるものを規制し、あらゆることを抑圧していた。

生活、文化、娯楽、音楽、情報など、すべての実権を政府が握っていて、事実上の鎖国状態。

多くの国民が犠牲となり、各地で声をあげるも強大な権力の前では無力と化す。

ここから、ロドリゲスの「歌」が動き始める。

キャント・ゲット・アウェイ( Can’t Get Away )

このあたりから、すこし変化が見られる。

なぜアメリカで彼は無名なのか。

ロドリゲスという人物を解明すべく、分析、そして推理していく。

カミング・フロム・リアリティ( COMING FROM REALITY )

※カミング・フロム・リアリティは2枚目のアルバムのタイトル

1996年、南アフリカのレコード会社がセカンドアルバム「カミング・フロム・リアリティ」をCD化した。

ロドリゲスというミュージシャンについて、こう書かれている。

ポップ音楽史の謎といえば、まずロドリゲスだろう

世界に広まった謎ではない

2枚のアルバムは、世界中でまったく売れなかった

彼に関する証言はあやふやだった

検証するものはいないのだろうか

ロドリゲスという人物、彼の死の真相を知るには、彼の情報がもっと必要だ。

いろんな角度から、彼を取り巻くものを1つずつ洗っていく。

絡み合った不透明なヒモが、1つずつ解きほぐされて色を付けていく。

キーワードは「ディアボーン( Dearborn )

1本の電話

1997年、1本の電話から始まる。

この25年間 南アフリカでロドリゲスのアルバムが100万枚 売れています

彼の死の真相は?

ここで長年不可解だった1つの謎が明らかになる。

アイ・シンク・オブ・ユー( I Think of You )

謎が明らかになり、ロドリゲスを探すという物語が完結した。

と思われた矢先、新たな物語が始まった。

1人の女性との出会いによって、事態は劇的に変化する。

後半

ここから先は、ぜひ映画を観て、知ってほしい。

これ以上、ネタバレになることは書けない。

映像を見て、知って、感じてほしい。

私はこの映画を観て、泣いた。

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1970年代

この時代、日本でもメッセージ性の強い音楽が世間を動かし、大きな社会問題になった。

「学生運動」

日本ではフォークソングが大流行し、若者が社会を動かした。

たしか、イギリスでも同じようなことがあったと記憶している。

イギリス政府が公式に「ビートルズの曲を聴くな」と宣言した。

理由は「若者が戦争に行かなくなるから」。

ベトナム戦争が始まったのは1964年あたり。

「 All You Need Is Love (愛こそはすべて) 」は、その最たるものだ。

ビートルズの曲は、反戦を訴えるものが多い。

ゆえに、アメリカ政府としては厄介な存在。

「一個人 VS アメリカ政府」というありえない構図ができあがる。

昔見た映画「 PEACE BED アメリカ VS ジョン・レノン」がまさにそれ。

【中古】PEACE BED アメリカ VS ジョン・レノン【字幕】

私はビートルズファンなので、音楽を聴きに行く的な軽い感じで見に行った。

内容は思っていたものとは違っていて、衝撃的だった。

一個人 VS アメリカ政府。

最後に

夢とは、現実から一番遠いところにある。

夢を現実にすることは、稀有なことだ。

彼の歌は、今も変わらず人々の心に残っている。

たくさんの人の人生を変え、運命を変えた。

大きなことを成し遂げ、愛は届いた。

そんな中でも、ずっと変わらないものがある。

彼の音楽は、いまも生きている。

音楽が持つパワーは計り知れないほど強大なものだ。

それは人を動かし、社会を動かし、国を動かす。

脅威でもあり、心の支えでもある。

音楽は不思議だ。

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