映画「大脱走」を見た感想<午前十時の映画祭>

映画鑑賞の感想文

<午前十時の映画祭>

「一度、スクリーンで観たかった。もう一度、スクリーンで観たかった。」

午前十時の映画祭13 デジタルで甦る永遠の名作
午前十時の映画祭13 デジタルで甦る永遠の名作

4月1日~3月30日を1年として、2週間代わりで素晴らしい名作映画を公開しているこの企画。

作品によっては「1週間限定公開」もあるので御注意を。

午前10時とあるが、作品によっては10時より前に上映することもあるので、上映映画館のスケジュール確認は必須。

公式HPでは

  • 上映開始時間は<午前10時に限定せず>それぞれの劇場の判断で<午前中の上映開始>となります。
  • そのため、上映開始時間は劇場ごとに、また作品によっても異なります
  • また、鑑賞料金も各劇場が設定した料金となりますのでご了承ください。
  • ご鑑賞前に各劇場の公式サイトなどでご確認をお願いいたします。

私の住む街:栃木県では「ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが」と「TOHOシネマズ宇都宮」の2ヶ所で上映している。

記事の文字数

この記事は8228文字あります。

とても長くなってしまいました。

あらすじ

第二次世界大戦下、ドイツの田舎道を多くの捕虜を乗せた軍用車両が連なり走っていく。

たどり着いた場所は、ナチス軍の捕虜収容施設:スタラグ・ルフト。

ドイツ軍は、たびたび脱走を計る脱走常習犯たちに手を焼いていた。

見晴らしの良い敷地に鉄線を張り巡らせ、見張りを強化し、「脱走不可能な収容所」を作り、脱走常習犯たちを収容した。

逃げ出すことを諦めない男たち。

やがて、総勢250名にも及ぶ集団脱走の計画が動き始める。

キャスト

左から、役名、俳優、担当・立場、階級、人物。

捕虜

イギリス空軍

ラムゼイ ジェームズ・ドナルド 連合軍捕虜の先任将校 大佐 片足が不自由で杖を突いている、捕虜側の代表としてドイツ側との連絡役を負う。
ロジャー・バートレット(ビッグX) リチャード・アッテンボロー 参謀、ブレイン、指南役 少佐 頭脳に秀でた脱走のカリスマ。
サンディ・マクドナルド(マック):スコットランド人 ゴードン・ジャクソン 情報屋 大尉 収容所内のあらゆる情報を収集、語学に堪能で脱走前にフランス語やドイツ語の会話能力の試験を担当した。
ウィリアム・ディックス(ウィリー) ジョン・レイトン トンネル王 大尉 無二の親友ダニーと共にトンネル掘りを担当、優しい性格が特徴。
コリン・ブライス ドナルド・プレザンス 偽造屋 少佐 身分証の偽造などの精密作業で長時間目を酷使し続けた結果、急速に視力が衰えて(進行性近視)ほとんど失明状態になる。
エリック・アシュレー=ピット デヴィッド・マッカラム 分散屋 少佐 トンネル堀りで出た土の処理方法を編み出した。
デニス・カベンディッシュ ナイジェル・ストック 測量屋 大尉 トンネル掘りの作業音の偽装のために合唱隊を組織し、その指揮も担った。
グリフィス ロバート・デズモンド 仕立て屋 不明 軍服、カーテン、毛布やそのほか所内のあらゆる物を駆使して脱走用の平服やコート、ドイツ軍の制服などを仕立てていく。
ソレン ウィリアム・ラッセル 警備屋 不明 合図ひとつですぐに脱走のための準備作業を中止したり、偽装できる警戒体制を敷く。
ニモ トム・アダムス 陽動役 不明 脱走はできたものの、ドイツ軍に見つかり逮捕されて収容所へ連れ戻される。
アーチボルド・アイブス:スコットランド人 アンガス・レニー モグラ 中尉 小柄でノリの良い明るい表情とは裏腹に、長年の収容所暮らしで精神的に追い詰められている。

イギリス空軍所属(その他)

ルイス・セジウィック:オーストラリア人 ジェームズ・コバーン 製造屋 中尉 トンネル掘削用のツルハシ・シャベルからエアダクトまで、所内のあらゆる物を利用して脱走用の諸道具を作り上げる。
ダニエル・ヴェリンスキー(ダニー):ポーランド人 チャールズ・ブロンソン トンネル王 大尉 脱走用トンネルの掘削作業を担当す、子供の頃からの閉所・暗所恐怖症でありながらも、そのことを押し殺してトンネルを掘り続ける。ウィリーの無二の親友で、屈託のないやさしい男である。
アンソニー・ヘンドリー:アメリカ人 ジェームズ・ガーナー 調達屋 大尉 英空軍の義勇飛行隊、いわゆる「イーグルスコードロン」所属。自身を「ちょろまかし屋」と自称する通り、わずかな隙を見てドイツ軍の物資を盗む術に長けている。偽造屋のイギリス軍士官コリンと親しくなる。
ヘインズ ローレンス・モンテイン 陽動役 不明 入所初日にセジウィックと共に「ケンカ」を演じてみせ『最初の脱走』に貢献、自らも参加するが失敗する。ニモと行動を共にすることが多い。

アメリカ航空兵

バージル・ヒルツ スティーブ・マックイーン 独房王 陸軍航空隊大尉 本作の主人公、単独行動を好む一匹狼。 野球が趣味で、独房でもボールとグローブは欠かさない。独房で隣同士となったアイブスと意気投合した。
ゴフ ジャド・テイラー なし 中尉 ヒルツが独房へ送られるごとに、愛用しているボールとグローブを手渡していた。

ドイツ軍:捕虜収容所

フォン・ルーガー ハンネス・メッセマー 所長 ドイツ空軍大佐 「腐った卵を一つの籠に」という思惑で捕虜を集めたが、結果、手に余るほどの脱走のプロたちの集いを作り上げてしまった。敵国軍人を憎しみの対象としては見ておらず、「捕虜の本分は逃走による敵地かく乱」との連合軍捕虜の主張に一定の理解を示す。人徳者で、ドイツ空軍の軍人であることに誇りを持ち、冷酷非情さを誇るかのような親衛隊やゲシュタポを快く思っていない。
ポーゼン ロバート・フライタッグ ルーガー所長の副官 空軍大尉 ルーゲルの解任後、後任として所長に就任する。
ハンス・フォン・シュトラハヴィッツ ハリー・リーヴァウワー 看守長 有能な空軍下士官 入所初日の脱走も素早く見抜き、「初日だからお互いに愚かな行為が多い」と不問に付す。
ウェルナー(白イタチ) ローベルト・グラフ 看守 不明 ヘンドリーに隙を突かれ、あっさり財布を盗まれる。

ゲシュタポ:ドイツ秘密国家警察

プライセン ウルリッヒ・バイガー 脱走捕虜の探索責任者 ハゲ頭、チョビヒゲ、メガネの外見と皮肉な物言いが特徴。
クーン ハンス・ライザー ゲシュタポのメンバー ロジャー・バートレットの逮捕に執念を燃やしている

1963年公開

昭和38年。

2023年から50年前、何があったのか書き出してみる。

作品設定:1943年

作中の時代背景は1943年、昭和18年。

第二次世界大戦の真っ只中。

挙げればキリがないので省略するが、戦争に関する出来事がたくさんあった時代だ。

この1943年から2年後の8月15日、日本における第二次世界大戦の終結(終戦)を向える。

ハプニング

本編が始まる前、予告が流れているとき、20代前半とおぼしき女性2人、手にはポップコーン&ドリンクセット、一番後ろの席に座った。

50年も前の映画に興味あるなんてチョイスが渋いぞっ。

チョイス choice 無数の候補の中から選ぶ
セレクト select ある程度限定された選択肢の中から選ぶ

若い彼女たちは何をしていても楽しい年頃、予告でもずっと喋っていた。

本編が始まって1分ほど経過、上段からコソコソと彼女たちの話し声が聞こえる。

と、階段を駆け下り慌てて出ていく彼女たち。

まさかのスクリーン間違い、こんなことあるのか…と驚いた。

私の予感的中、若者が好む映画ではないよね。

なんの映画と間違えたのだろう??

大脱走のマーチ

本編が始まると、軽快な音楽が流れる。

戦争映画とは思えない明るい雰囲気で本作は始まる。

あ!これ聞いたことあるぞ!CMでも使われている曲だ!

テーマ曲がテンポ良くてポップな感じなので、悲劇を悲劇として描いていない。

入所初日

入所初日、ケンカ騒ぎを起こしてドイツ軍たちの目を引かせたり、作業のために収容所外へ行くロシア軍捕虜に紛れるためにあれこれと工夫しながらどうにか脱走しようとするところは見どころの1つ。

それに騙されずに脱走兵を見落とさないドイツ軍、脱走がバレた捕虜はすぐに踵を返して収容所内へと行進する、笑った。

よく練られた現代のコントを見ているようでおもしろかった。

登場する人がみな同じような色の服を着ているので、誰がどこの国の人なのかわからない。

帽子についているバッジ(帽章)で区別できる、気がする…。

独房生活

収容所内をウロウロするヒルツ、監視台と監視台との間の鉄条網に「死角」があることを見抜く。

グローブとボールを使って、さり気なくボールを鉄条網の傍にわざと投げ入れて「あっ、間違ってボールが入っちゃった、ここに入らないと取れないよね」ということで立ち入り禁止区域に入るが見事に看守に見つかり機銃掃射を受けるが、ヒルツは無傷で助かる。

その大胆不敵な振舞いからさっそく所長に目をつけられ、独房に放り込まれる。

その場で所長を侮辱したアイブス、ヒルツと一緒に独房入り。

壮大な脱走計画

ここからの構成がおもしろかった。

独房にいるのでヒルツのシーンはしばらく無くなる。


ゲシュタポに連れられて、ロジャーが収容所に到着する。

このロジャーは、「 ビッグ Xエックス 」と呼ばれる集団脱走の計画立案・実行のリーダー。

到着したその日の夜、ロジャーは馴染みのあるメンバーを集めて「3本のトンネルを掘って250名もの捕虜を脱走させる」という脱走計画を説明する。

道具もなく、24時間監視されている中、彼らは盗んだり隠したりたばかりながら作業を進め、工夫と智恵と技術を駆使し、トンネル掘り計画が進められる。

しばらくヒルツが登場しないことで、ヒルツの独房生活の長さを表現している。

トンネルの発掘シーンは、閉所恐怖症には辛い。

あの閉鎖感と恐怖は…見ていてゾワゾワした。

口笛と雪山賛歌

コリンの相棒:ヘンドリーがよく口笛を吹いている。

どこかで聞いたことあるメロディー、そう、コレだ。

歌詞は、京都帝國大学山岳部の西堀榮三郎らが「雪山ソング」として替え歌したもの。

原曲はコレ。

アメリカのフォークバラード「 いとしのクレメンタイン Oh My Darling , Clementine 」。

 1946年のアメリカ映画「荒野の決闘」( 原題:My Darling Clementine )主題歌として世界的に有名。

掘り出した土の行方

掘った土の処分方法、これは「ショーシャンクの空に」と同じやり方だ。

万国共通なのかしら?

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無計画の脱走、失敗

独房生活が終わって外に出てきたヒルツは、すぐにでも脱走したくてウズウズしている。

アイブスと共にトンネルを掘って脱走、そして見事失敗。

再び独房に入れられることに。

全身泥だらけヒルツには笑った。

アメリカ独立記念日とアルプス一万尺

ヒルツ、ヘンドリー、ゴフの3人が、なにやらコソコソと動いている。

やたらとジャガイモを確保したりと、怪しい動きをしている。

もしかして脱走用の保存食を作っている?

と思いきや、違っていた。

ヒルツ、ヘンドリー、ゴフの3人はアメリカ人。

来月4日のアメリカ独立記念日のためにジャガイモを蒸留してウォッカ(日本語字幕・吹き替えでは焼酎)を密造していたのだ。

完成した芋焼酎を試飲する3人。

想像以上にアルコール度数が強かったようで、「ワァーォ」(高音)は笑ったし可愛かった。

芋焼酎が入った大きな瓶を方に乗せ、太鼓に見立てたバケツ?を持ち、笛を吹きながら3人は外を行進し、酒をみんなに振る舞ってアメリカ独立記念日を祝う。

このとき笛で拭いていた曲、日本では子供の手遊びとして誰もが知る「アルプス一万尺」。

これが流れるからビックリした。

調べてみると、曲名は「ヤンキードゥードゥル」( Yankee Doodle )。

アメリカ合衆国の民謡で、独立戦争時の愛国歌。

1978年にはコネチカット州の州歌に採用されたそうだ。

疑問

軍人の本質ってなんだろう?

祖国のために命を懸けること?

政府のお偉いさんたちの命令を忠実にこなすこと?

任務推考のために良心を無くすこと?

5分間の休憩(インターバル)

途中5分間の休憩あり。

アイブスの死で前半。

3時間10分、まったくダレることなく楽しめた。

後半

後半は、完成した脱出用トンネルと脱走推考、その後について描かれている。

いざ決行!となると、予期せぬ問題が出てくるものである。

彼らは、知恵と工夫と読経でピンチをどうにか乗り越える。

この脱出シーンは、手に汗握るハラハラドキドキの連続。

スティーブ・マックイーン:バイクで爆走

スティーブ・マックイーンがバイクで爆走するシーンは、カッコ良さしかない。

あれはシビれる。

ドイツ軍のバイク

ヒルツを追うドイツ軍、サイドカーのバイクで走っている。

私は車やバイクに詳しくないのでよくわからないが、調べてみたらBMWのR75というバイクらしい。

BMW・R75 - Wikipedia

サイドーカー付きなので車幅があり、小回りが利かない。

カーブではどうやって曲がるのか、それはサイドーカーの人が身を乗り出して重心をズラす。

わかりやすく言うと、ジブリ映画「魔女の宅急便」でキキとトンボがプロペラ自転車に乗ってカーブを曲がるシーンと同じ。

後ろに乗っているキキが外側に大きく身を乗り出してバランスを保っているあのシーン。

エンドロール

出演者やスタッフの名前が表示されるエンドロール。

役名と共に「情報屋」とか「測量屋」などの肩書が表示される。

改めてみると、多くの人が捕虜として収容されていたのだと気付く。

そして、主人公であるヒルツの肩書は「独房王:ヒルツ」、これには笑みがこぼれた。

最後に「兵士50名にこの映画を捧ぐ」の文字が映し出される。

つまり、この映画は実話なのだ

原作小説

1943年3月にチュニジア戦線で乗っていたスピットファイア機がドイツのメッサーシュミット機の機銃掃射を受け、パラシュートで脱出した後にドイツ軍の捕虜となったポール・ブリックヒルが、送られた捕虜収容所で体験した脱走計画の詳細を、戦後に一冊の本「 The Great Escape 」にまとめて出版した。

これを読んだジョン・スタージェス監督がすぐに映画化権を買い取り、自ら製作者も兼ねて作られた。

この映画は1950年に出版されたポール・ブリックヒルのノンフィクション小説「 The Great Escape 」原作としているが、内容はかなり脚色されている。

wikipedia:実際の脱走との比較

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最後に

戦争映画と言えば、激しい銃撃戦、死の恐怖、無残な屍など、精神的にダメージを受けるような内容が多い。

この作品は戦争の映画だが、戦闘シーンが描かれていない、とても珍しい映画だ。

恐怖心をあおるような構成でもない。

焦点が「戦争の悲惨さ」ではなく「主人公が体験した集団脱走」というところがまたおもしろい。

「語り部を聞く」というより「第三者目線で間近で見るドキュメント」だと思う。

不朽の名作、と言われ続けている意味がよく分かる。

この映画をオススメしてくれたお客さんに感謝!

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