映画「タワーリングインフェルノ」を観た鑑賞<午前十時の映画祭>

映画鑑賞の感想文

<午前十時の映画祭>

「一度、スクリーンで観たかった。もう一度、スクリーンで観たかった。」

午前十時の映画祭13 デジタルで甦る永遠の名作
午前十時の映画祭13 デジタルで甦る永遠の名作

4月1日~3月30日を1年として、2週間代わりで素晴らしい名作映画を公開しているこの企画。

作品によっては「1週間限定公開」もあるので御注意を。

午前10時とあるが、作品によっては10時より前に上映することもあるので、上映映画館のスケジュール確認は必須。

公式HPでは

  • 上映開始時間は<午前10時に限定せず>それぞれの劇場の判断で<午前中の上映開始>となります。
  • そのため、上映開始時間は劇場ごとに、また作品によっても異なります
  • また、鑑賞料金も各劇場が設定した料金となりますのでご了承ください。
  • ご鑑賞前に各劇場の公式サイトなどでご確認をお願いいたします。

私の住む街:栃木県では「ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが」と「TOHOシネマズ宇都宮」の2ヶ所で上映している。

あらすじ

地上550メートル・138階、サンフランシスコにそびえ立つ世界最大の超高層ビル。

その落成式の日に地下の発電機の故障から火災が発生。

やがて数百人の生命を飲み込む炎の地獄と化して燃え上がる。

※タワーリングインフェルノの日本語訳は「そびえ立つ地獄

キャスト

マイケル・オハラハン スティーブ・マックイーン 消防隊のチーフを務める グラスタワーの異常な階の高さと不十分な安全面をダグに苦言を呈しつつも、いくつかの場面で危険な任務に携わる。
ダグ・ロバーツ  ポール・ニューマン グラスタワーの設計者 会社から独立して婚約者のスーザンと砂漠で生活するために退職を決めていた。オハラハンと共に避難誘導・消火の手助けをする。
ジェームズ・ダンカン ウィリアム・ホールデン グラスタワーのオーナー 利益優先・最新鋭のビルへの過信・自身のプライドを守ろうとした結果、被害を拡大させた。
スーザン・フランクリン フェイ・ダナウェイ ダグの婚約者 出版社に勤務、編集長の後任に自身が選抜され自分の企画を発表することを目標としている。
ハーリー・クレイボーン フレッド・アステア 投資家を装った詐欺師 アナハイム電力の偽造株券を所持し、未亡人のリゾレットに購入を持ちかけた詐欺師。
パティ・シモンズ  スーザン・ブレイクリー ダンカンの娘 夫:ロジャーに厳しい言葉をかけながらも彼に寄り添おうとする。
ロジャー・シモンズ リチャード・チェンバレン パティの夫でダンカンの娘婿 2年前にダンカンの予算削減の求めに乗じて私腹を肥やそうと低品質な配線に差し替えるという不正な電線工事を行い火災の原因を作った。
リゾレット・ミュラー ジェニファー・ジョーンズ 宿泊客 友人であるオルブライト夫人の子供の面倒を見ており、火災が起きた時にダグたちが救出した子供たちと共に危険な避難を試みる。
ハリー・ジャーニガン O・J・シンプソン 警備員で保安係主任 ダグと共にオルブライト夫人らを救出し、リゾレットの飼い猫を保護する。
ゲイリー・パーカー上院議員 ロバート・ヴォーン 来賓 我先に救命籠に乗ろうとするロジャーの暴挙を止めようとする。
ダン・ビグロー ロバート・ワグナー 広報部長 65階にある自身のオフィスで秘書:ローリーと密会。
ローリー スーザン・フラネリー ダンの秘書で愛人 ダンとの密会が運命の分かれ道になる。
ポーラ・ラムジー市長夫人 シーラ・マシューズ ロバート市長の妻 展望用エレベーターで他の女性客と共に避難をおこなう。
ロバート・ラムジー市長 ジャック・コリンズ ダンカンの友人 ダンカンはボブと呼んでいる。
ウィル・ギディングズ ノーマン・バートン ダグの同僚 火災の最初の犠牲者、81階の火元の倉庫のドアを開けようとした警備員の身代わりになって火が体に燃え移り救急搬送される。
オルブライト夫人 キャロル・マケヴォイ フィリップとアンジェラの母親 聴覚が不自由であるため電話での避難誘導に気付かず、子どもたちと共に逃げ遅れてしまう。
フィリップ・オルブライト マイク・ルッキンランド アンジェラの兄 ヘッドホンの大音量で避難誘導に気付かず、家族と共に逃げ遅れる。
アンジェラ・オルブライト カリーナ・ガワー フィリップの妹 兄の奥の部屋で炎に怯えていた。
歌手 モーリン・マクガヴァン パーティーで歌っている 本作品の主題歌を、パーティ会場で本人が歌唱して出演。

1974年公開

1974年、日本では昭和49年。

超高層ビル

いまではそこかしこにそびえ立つ超高層ビル、高層階にはオフィスやホテルも備わっている。

最上階で行われるパーティーを待ちわびる招待客。

ビルの設計者:ダグ・ロバーツは、パーティーよりも「今日1日を無事に終えること」に気を配っている。

設備室などに設置されているコンピュータが大型、無線ではなく有線の内線電話、時代を感じる。

こうして見ていると、客の快適な滞在を支えているのは「見えない大多数の人たち」。

安全を守る人たち、食事を作る人たち、案内する人たち、想像以上の多くの人が働いている。

予算の削減

経営者たるもの、予算(出費)はできるだけ抑えたい。

これはいつの時代も変わらない。

では、どこで予算を抑えるのか。

これもいつの時代も変わらない、手抜き工事安価な材料がよく使われる。

この作品もそう、指定されていた配線ではなく「規格落ちの細い配線」が使われていた。

このことによって細い配線が使用電気に耐えられず熱が発生し「出火」してしまう。

予算の削減は社長の指示

ビル建設の責任者のロジャー・シモンズは、社長のジェームズ(ジム)・ダンカンの娘婿。

パワーバランスによって義父の指示に従わざるを得ないロジャー。

よりによって「電気系統の手抜き工事」と「規格外の配線使用」とは・・・。

これによって何が起きるのかは想像できると思うけど・・・ロジャーはスルーしたんだろうね。

善悪は表裏一体

1つ禁忌を犯すと2つ目に手を出しやすくなる。

2つ目に手を出すと罪悪感が薄れる。

罪悪感が薄れれば3つ目、4つ目と進みやすくなる。

しかも1つ目以上にエスカレートしていく。

ここまで来れば罪悪感は無くなる。

罪の意識は皆無。

じゃあ誰が悪いのかって?指示した人。

実行した自分は「ただ命令に従っただけ」だから悪くない。

命令によって従って行動した場合、自身が持つ責任は希薄になる。

この心理状態は「アイヒマン実験」で説明できる。

ミルグラム実験(アイヒマン実験)

閉鎖的な状況における権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したもの。

この実験の存在を知ったのは、昔に見たテレビ番組。

これは強烈な内容だったので今でも鮮明に覚えている。

2003年5月31日放送 TBS「USO!ジャパン」にて。

「Xファイル」禁断の人体実験・アイヒマン実験

アドルフ・アイヒマン

アドルフ・アイヒマンは、ドイツの親衛隊隊員であり、ゲシュタポ(秘密国家警察)のユダヤ人移送局長官。

数百万人のユダヤ人を絶滅収容所に輸送する責任者であり、ユダヤ人撲滅政策・大量虐殺(ホロコースト)に関与していた。

  • アイヒマンはじめ多くの戦争犯罪を実行したナチス戦犯たちはそもそも人格異常者だったのか
  • 一定の条件下では誰でもあのような(ホロコースト)残虐行為を犯すものなのか

アイヒマンは裁判で「命令に従っただけだ」と主張した。

その裁判の翌年に、上記の疑問を検証しようと実施された。

実験の内容

一般公募により集められた被験者(実験参加の報酬付き)は、くじ引きで「教師役」と「生徒役」に分けられる。

被験者たちはあらかじめ「体験」として45ボルトの電気ショックを受け、「生徒役」が受ける痛みを体験させられる

「教師役」と「生徒役」は別の部屋に分けられインターフォンを通じてお互いの声のみが聞こえる状況下に置かれる。

単語を使った簡単な受け答え

  1. 「教師」はまず2つの対になる単語リストを読み上げる
  2. 単語の一方のみを読み上げ対応する単語を4択で質問する
  3. 「生徒」は4つのボタンのうち「答え」の番号のボタンを押す
  4. 「生徒」が正解すると「教師」は次の単語リストに移る
  5. 「生徒」が間違えると「教師」は「生徒」に電気ショックを流すよう指示を受ける
  6. 電圧は最初は45ボルト
  7. 「生徒」が1問間違えるごとに15ボルトずつ電圧の強さを上げていくよう指示される

横一直線に30個のスイッチが並んでいる機器、電気ショックを与える機器だ。

電気ショックを与えるスイッチには、電圧とともにショックの程度を示す言葉が表記されている。

電気ショックの強さ

  1. 15ボルト 「SLIGHT SHOCK」(軽い衝撃)
  2. 75ボルト 「MODERATE SHOCK」(中度の衝撃)
  3. 135ボルト 「STRONG SHOCK」(強い衝撃)
  4. 195ボルト 「VERY STRONG SHOCK」(かなり強い衝撃)
  5. 255ボルト 「INTENSE SHOCK」(激しい衝撃)
  6. 315ボルト 「EXTREME INTENSITY SHOCK」(はなはだしく激しい衝撃)
  7. 375ボルト 「DANGER: SEVERE SHOCK」(危険: 苛烈な衝撃)
  8. 435ボルト 「X X X」
  9. 450ボルト 「X X X」 

電気ショックを受ける「生徒」の苦痛を訴える声がインターフォンから聞こえる。

苦痛を訴える「生徒」

  1. 75ボルトになると、不快感をつぶやく。
  2. 120ボルトになると、大声で苦痛を訴える
  3. 135ボルトになると、うめき声をあげる
  4. 150ボルトになると、絶叫する。
  5. 180ボルトになると、「痛くてたまらない」と叫ぶ。
  6. 270ボルトになると、苦悶の金切声を上げる。
  7. 300ボルトになると、壁を叩いて実験中止を求める。
  8. 315ボルトになると、壁を叩いて実験を降りると叫ぶ。
  9. 330ボルトになると、無反応になる

被験者が実験の続行を拒否しようとする意思を示した場合、白衣を着た権威のある博士らしき男感情を全く乱さない超然とした態度で次のように通告する。

実験続行を促す博士の言葉

  1. 「続行してください。」
  2. 「この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。」
  3. 「あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。」
  4. 「他の選択肢はありません、あなたは続けるべきです」
  5. 1から4の通告の間に被験者が拒否をみせると「体に後遺症を残すことはありません。」「責任は我々がとります。」と言う

実験結果

被験者40人中26人(統計上65%)が用意されていた最大電圧である450ボルトまでスイッチを入れた

中には電圧を付加した後「生徒」の絶叫が響き渡ると、緊張の余り引きつった笑い声を出す者もいた。

何人かの被験者は実験の中止を希望して管理者に申し出て「この実験のために自分たちに支払われている報酬を全額返金してもいい」という意思を表明した者もいた。

しかし、権威のある博士らしき男の強い進言によって一切責任を負わないということを確認した上で実験を継続しており、300ボルトに達する前に実験を中止した者は1人もいなかった。

実験の真相

「生徒」が受ける電気ショックだが、実は生徒役はあらかじめ用意されたサクラ。

実は生徒は電気ショックを一切受けていない

あくまで実験であり、教師役の心理状態を調べるためのもの。

権威や役割が容易に深刻な非人道的・暴力的行為につながることを示している。

逆を言えば、非人道的行為は「権威」や「役割」によって希薄になる。

81階で火災発生

漏電などによって起きる火災は、どこで発生するのか分からない。

流れる電気量で配線が溶け出し、ショートしてしまう。

81階にある物置室の配電盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が、マットをくすぶらせ始める。

しかも災害探知警報装置が作動しないと言うコンボ中のコンボが発生。

地獄の始まりである。

最上階のパーティー会場

そこに集まるのは、上院議員や市長などの角界の要人たち、ビルの80階より上の住居部分の住人たち。

参加者は200~300人くらい?

近付く火の手

ボヤ火災が強くなり、81階の物置室は火の海。

火の勢いが強く、このままでは大惨事になるとダグは社長に訴えるも「消防隊で消化できるよ」と式典続行。

隊長登場

到着した消防隊に彼が居た、そう、オハラハン隊長:スティーブ・マックィーン。

いやーカッコイイを結晶化して擬人化した人、スティーブ・マックィーン。

冷静に対処していくオハラハンの姿、とても信頼できる男。

広報部長の失態

広報部長:ダンは、自分のオフィスで愛人秘書とイチャイチャ。

電話線をOFFにしているので、外で何が起きているのかまったく気付かない。

異変を感じて果敢に挑む。

てか秘書、さっさと服を着なさい(笑)。

救助が来たときにその格好はダメでしょう(笑)。

あと、ガラス張りの高層ビルだよね。

脱出するためにガラスを割るのは分かるけど、高層ビルなら強化ガラスだよね?

半裸の女性がイスを投げつけただけで割れるの?(笑)。

最上階からの脱出(絶望の表現がすごい)

ここからの展開がすごかった。

絶望の描き方が素晴らしい。

  • 脱出のためのアイデア → 失敗
  • 新たなアイデア → 失敗
  • 「やった!これで生き延びられる!」 → 失敗

これの繰り返し、「希望」を完膚なきまでに叩きのめす。

映画の構成上上記を繰り返すのはわかる、けれどやっぱり感情の緩急が激しくなる。

165分の長編映画

165分は2時間45分。

3時間近い上映だが、あっという間に感じた。

物語の構成がとても分かりやすく、大勢が出演しているが理解しやすかった。

海外ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」みたいな構成、1つの出来事に対して同時刻に各人に起きていることを丁寧に描いている。

素晴らしい。

最後に

2023年の現在から49年前の1974年公開。

当時はまだCGなどのグラフィック技術は乏しい時代。

この大火災をどうやって撮影したのだろう?

巨大セットなどを駆使した撮影方法、それを安っぽく見せない工夫がすばらしい。

歴史的第三次を俯瞰で見ているような気分。

とてもおもしろかった。

こういった素晴らしい映画を映画館で鑑賞できることがとても嬉しい。

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