お客さんと近況について話していたときのこと。
お客さん「やっと時間が作れたので映画を観てきました」と。
何を見たのか訊ねると「バニシング・ポイント」。
なんでも、今から51年前の映画だという。
半世紀前の映画を映画館で見られるなんて滅多にない!
思い立ったが吉日だ!
あらすじ
ベトナム戦争で名誉勲章を受け、レースドライバーや警官の職を経て、現在は車の陸送で生計を立てるコワルスキー。
コロラド州デンバーから1200マイル離れたサンフランシスコまで「白の70年型ダッジ・チャレンジャーを翌日の午後3時までの15時間で届ける」という無謀な賭けをした。
爆走するその車を追って、各州警察が追跡を開始。
交通法規を無視して暴走するコワルスキーを警察が追う中、警察無線を傍受した盲目の黒人DJ:スーパー・ソウルがラジオで実況中継を開始。
他愛のない賭けは思わぬ大騒動へと発展する。
コワルスキーに共感する者たちの輪が広がっていき、ある者は協力し、またある者は声援を送った。
大勢の野次馬やメディアが押し寄せる中、コワルスキーの逃走劇は世間の注目の的となる。
そのありさまを苦々しく思う警察は、威信にかけてコワルスキーを止めようと異常なまでの検問をひく。
コワルスキーは、ブルドーザーが道路封鎖するバニシング・ポイント<消失点>に向かってアクセルを踏み込んでいく…。
キャスト
コワルスキー | バリー・ニューマン | ベトナム戦争に従軍した退役陸軍軍人、プロのレースドライバー、警察官、愛する女性を失った男 |
スーパー・ソウル | クリーヴォン・リトル | 盲目のラジオDJ |
ジェイク | リー・ウィーバー | ドラッグ・ディーラー |
陸送屋サンディ | カール・スウェイン | コワルスキーに賭けを持ち掛ける |
砂漠の老人 | ディーン・ジャガー | ヘビを捕獲している |
ホバー | セヴァーン・ダーデン | 司祭 |
チャーリー | ポール・コスロ | 若い警官 |
コリンズ | ボブ・ドナー | 中年警官 |
エンジェル | ティモシー・スコット | バイカー |
ヌードのバイク娘 | ギルダ・テクスター | |
ベラ | ヴィクトリア・メドリン | |
歌手たち | デラニー & ボニー & フレンズ | |
DJスーパー・ソウルのエンジニア | ジョン・エイモス | |
ヒッチハイカーの男① | アンソニー・ジェイムス | |
ヒッチハイカーの男② | アーサー・マレット |
上映映画館
劇場情報はこちら。
すでの多くの映画館で上映を終了している。
1971年公開
昭和46年、何があったのか書き出してみる。
- 大阪万博で作られたタイムカプセルEXPO’70が大阪城天守閣前に埋設される(6970年開封予定)
- 三島由紀夫の本葬が東京の築地本願寺で行われる(葬儀委員長は川端康成)
- 「新婚さんいらっしゃい!」が放映開始
- 積水化学工業がユニット住宅「セキスイハイム」を発売
- 真岡銃砲店襲撃事件
- 東京電力福島原子力発電所、運転開始
- 丹頂がマンダムに社名変更
- フジテレビ系列で「ゴールデン洋画劇場」放映開始
- 特撮テレビドラマ「仮面ライダー」放映開始
- マクドナルドの日本法人である日本マクドナルドが創業
- 大久保清逮捕
- 集英社が「non-no」を創刊
- マクドナルド日本第1号店「銀座店」
- サンヨー食品が「サッポロ一番塩らーめん」を発売
- 森永製菓が「小枝」を発売
- 日清食品が「カップヌードル」を発売
- 日本コカ・コーラが炭酸飲料「スプライト」を全国で発売開始
- テレビ公開オーディション番組「スター誕生!」放映開始
- 北九州市にロイヤルホスト1号店がオープン
- サッポロビールが「ヱビスビール」を麦芽100%ビールとして再発売(28年ぶりに復活)
- 大映が倒産
- 吉展ちゃん誘拐殺人事件の犯人小原保の死刑が執行される
- 1971年の音楽
- 1971年のテレビ (日本)
- 日本のテレビアニメ作品一覧 (1970年代)#1971年(昭和46年)
デンバーからサンフランシスコまで
Googleマップで大まかに調べてみると・・・。
アメリカはマイル表記なので、いまいちピンと来ない。
マイルをキロに変換すると・・・。
2454km、なるほど。
この距離を日本に置き換えてみると・・・。
日本とアメリカでは道路状況が違うのであまり参考にはならないが、この距離を15時間で走るとは・・・。
どのくらい無謀な賭けなのかがよくわかる。
ダッジ:チャレンジャー
アメリカのクライスラーがダッジブランドとして販売している車。
作中では1970年代の初代チャレンジャーが爆走している。
義務教育の英語をローマ字表記で勉強した世代からすると「DODGE」を「ダッジ」とは読めない・・・。
道
周囲に何もない、荒野と言えそうな景色の中を、真っ白なダッジ:チャレンジャーがひたすら爆走する。
警察に追われて道路から反れて、迂回につぐ迂回で道なき道を土埃を巻き上げながら走る。
アメリカは広大な土地、道路事情も日本とは違う。
地平線まで続く、一本道。
地平線の更に先、蜃気楼でうねるその先に、まだまだ道は続いている。
地平線、ただただまっすぐな道、こういった風景は北海道でしか見られない。
道中で出会う人たち
爆走するコワルスキーは、道中でさまざまな人と出会う。
ガソリンスタンド、集会、ポツンと一軒家など。
彼らは、公開当時の時代背景と関係している。
彼らが登場することで、その時代に何があったのかがわかる。
彼らは1960年代から始まったカウンターカルチャーの象徴だ。
カウンターカルチャー
カウンターカルチャーとは、前からある主流の文化(ハイカルチャー)に対抗する文化のこと。
既存の文化に反抗・対抗するというもの。
1960年代から始まり、世界中に影響を及ぼした。
キーワードはこの6つ。
- スピリチュアル
- ドラッグ
- SEX
- 人種
- ロックンロール
- LOVE & PEASE
以前観たミュージカル映画「Hair」にカウンターカルチャーについて書いた。
変化する時間軸
この映画は時系列で進むのではなく、時間軸が少し変わっている。
それは、コワルスキーが愛用しているアレのせいなのか。
もしくは、強いストレスによって呼び起こされるアレなのか。
それとも、あの時に見るといわれているアレなのか。
過去と現在が入り乱れる「メビウスの輪」のような構成は、当時は斬新な手法だったに違いない。
音楽とエンジン音
何が良いって、ダッジ:チャレンジャーのエンジン音。
豪快に唸るエンジンの叫び、ものすごくカッコイイ。
思い切りアクセルを踏み込んで、エンジンを一気に動かす。
最高にカッコイイ。
低音と高音が入り混じった独特の音、この音は日本ではなかなか聞けない。
私が担当している若いお客さん、ダッジ:チャレンジャーに乗っている。
エンジン音で彼が来たとすぐわかる、そのくらい独特な音。
作中に流れるニューロック
- スーパー・ソウルのテーマ / J・B・ピッカーズ
- 俺とあの娘 / ボビー・ドイル
- どこへ行こうか / ジミー・ウォーカー
- ウェルカム・トゥ・ネヴァダ / ジェリー・リード
- わがイエス / セガリーニ&ビショップ
- ランナウェイ・カントリー / ダグ・ディラード・エクスペディション
- ユー・ガット・トゥ・ビリーヴ / デラニー&ボニー&フレンズ
- ラヴ・テーマ / ジミー・ボーウェン・オーケストラとコーラス
- ソー・タイアード / イヴ
- 表現の自由 / J・B・ピッカーズ
- ミシシッピ・クィーン / マウンテン
- イエスへの叫び / ビッグ・ママ・ソーントン
- オーヴァー・ミー / セガリーニ&ビショップ
- バニシング・ポイント / キム&デイヴ
※バニシング・ポイントのサウンドトラック
バリー・ニューマン
ダッジ:チャレンジャーを暴走運転するコワルスキー役のバリーニューマン。
2023年5月11日に永眠、92歳。
この映画と、そしてコワルスキーと共に、魂の解放。
最後に
半世紀前の映画をスクリーンで観られるなんて感激だ。
キッカケをくれたお客さんに感謝、さらに感謝。
新しい映画も良いけど、古い映画をスクリーンで観ることの贅沢さと言ったらもう、ね。
昔を疑似体験しているような、もしくはタイムマシーンでその時代に行って見ている感じ。
この体験は病み付きになる。
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