映画「WORTH 命の値段」を観た感想

映画鑑賞の感想文
映画『ワース 命の値段』公式サイト
2月23(木・祝)公開!『ワース 命の値段』公式サイト。9.11テロの被害者遺族7,000人に補償金を分配した弁護士たちがいた。究極の難題「”命の値段“をどうやって算出するのか?」に挑んだ感動の実話。

世界を震撼しんかんさせた、あのテロ事件。

その裏側で、こんなことが起きていたとは知らなかった。

あらすじ

アメリカを襲った未曾有みぞうの大惨事9.11テロの発生直後、途方もない仕事に挑んだ人々がいた。

それは約7000人ものテロ被害者に補償金を分配する国家的な大事業。

このプログラムを束ねる弁護士:ケン・ファインバーグは、前代未聞の難題に直面する。

年齢も職種もバラバラの犠牲者たちの「値段」を、どうやって算出するのか。

彼らの「命」を差別化することは、道義的に許されるのか…。

全米の道徳観を揺さぶったこの知られざる実話は、犠牲者遺族それぞれの苦悩と向き合い、厳しい批判にさらされながらも、使命に立ち向かった弁護士たちの驚くべき2年間の軌跡である。

キャスト

役 名 俳 優
ケン(ケネス)・ファインバーグ マイケル・キートン
チャールズ・ウルフ スタンリー・トゥッチ
カミール・バイロス エイミー・ライアン
プリヤ・クンディ シュノリ・ラーマナータン

WORTH

WORTHとは「価値」。

VALUEとは少し意味合いが違う。

worth 絶対的な価値 いつまでも変わらない不変の価値
value

相対的な価値 他のものと比較することによって決まる価値個人的な価値(自分にとっては価値があるもの、あるいは重要と思われるものに対しても使われる)

大学での講義

とある大学での授業シーンから始まる。

黒板には「WHAT IS LIFE WORTH?」の文字。

教授が学生たちに役割を与える。

君はトウモロコシ農場で働く従業員だ。

トウモロコシ収穫機に巻き込まれて亡くなってしまう。

君は亡くなった従業員に賠償金を支払う会社の社員だ。

どうやって賠償金を算出する?

君は亡くなった従業員の母親だ。

この賠償金額をどう思う?

生徒たちは意見を述べ合う。

そして、教授が学生たちに問う。

キミの人生はいくらに換算できる?

ここへ哲学のコースではない。

だからこの問いには答えが出る。

数字を出すこと、それが私の仕事だ。

講義のあと、教授が電車に乗って移動している。

1人の乗客のスマホが鳴る。

1人、また1人とスマホが鳴る。

教授はヘッドホンでオペラを聞いていて気付かない。

ざわつく車内、慌ただしい乗客、周囲の異変にやっと気付く教授。

電車の窓から外を見ると目を疑う光景が……天高くそびえるビルがけむっている。

アメリカ同時多発テロ事件

2001年9月11日(火)の朝。

アメリカ合衆国北東部の空港からカリフォルニアに向けて出発した旅客機4機が、イスラム過激派テロ組織アルカイダのテロリスト合計19人にハイジャックされた。

ワールドトレードセンターへのテロ攻撃

アメリカン航空11便 午前8時46分(日本時間で午後9時46分) ノース・タワー(北棟) 突入から1時間42分後に崩壊
ユナイテッド航空175便

午前9時3分(日本時間で午後10時3分)

サウス・タワー(南棟) 突入から56分後に崩壊

ペンタゴン(アメリカ国防総省)へのテロ攻撃

アメリカン航空77便 バージニア州アーリントン郡のペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)に墜落 建物の西側が部分的に崩壊

テロ攻撃の失敗

ユナイテッド航空93便 ワシントンD.C.に向かって飛行していたが、乗員乗客がハイジャック犯の拘束を試みた結果、ペンシルバニア州ストーニークリーク郡区の野原に墜落

日本での報道

2001年9月11日火曜日、日本時間21:46。

夕食を終えてテレビを見ていたら、突然画面が切り替わったのを覚えている。

大きな建造物から黒い煙が上がっている映像が映し出される。

なにこれ?

他のチャンネルに切り替えるも、どの局も同じ映像。

なにが起きてる?

定点カメラの映像、かなり遠い場所から撮影しているようだ。

何が起きているのかサッパリ分からなかった。

事態を知ったのは翌日、朝からどの局も昨夜の映像のことを報道していた。

2001年の日本(平成13年)

何があったのか書き出してみる。

補償金分配基金の創設

未曾有みぞうの大事件によって、世界中がパニックにおちいった。

アメリカ政府は、被害者とその遺族に「補償金を分配する基金」を創設する。

どのくらいの被害者・対象者がいるのだろうか。

大勢の対象者への補償だけでなく、航空会社が破綻しかねない莫大な損害賠償訴訟の回避も目的とする基金プログラムは、いわば汚れ仕事

国家的大事業への協力を依頼されたのが、大学で講義していた弁護士:ケン・ファインバーグだ。

ファインバーグは、基金プログラムを束ねる「特別管理人」の職務を無償で請け負う。

ケン・ファインバーグ弁護士

実在する本作の主人公は、ケネス(ケン)・ファインバーグ弁護士。

ベトナム帰還兵の枯葉剤後遺症集団訴訟など数多くの補償問題に関わってきた、米国有数の裁判外紛争解決手続の専門家。

本作はファインバーグの回想録『 What is life worth? 』が原案となっている。

ワシントン ・ナショナル・オペラの元会長でもある。

9.11の以外にも、次のような事件を担当した。

2007年 バージニア工科大学銃乱射事件
2010年 BP社 メキシコ湾原油流出事故
2012年 コロラド州オーロラ銃乱射事件
  ペンシルベニア州立大学児童性的虐待スキャンダル
2013年 サンディフック小学校銃乱射事件
  ボストン・マラソン爆弾テロ事件
2014年 ゼネラルモーターズの点火スイッチリコール
2016年 オーランド ナイトクラブ銃乱射事件
  フォルクスワーゲンの排出ガススキャンダル
2021年 モンサント社ラウンドアップ製品訴訟

9.11被害者補償基金プログラム

このプログラムの最終目的は、全対象者のうち80%の参加申請を獲得すること。

申請の期限は2年後の2003年12月22日。

マンハッタンで行われた最初の説明会、多くの被害者たちの前で説明するファインバーグ弁護士。

収入を基準とした独自の計算式で算出する方針に、ざわめく参加者たち。

1人の参加者が叫ぶ「消防士のよりも株式トレーダーの命の方が高いのか!」。

ファインバーグ弁護士が何か言えば言うほど参加者の怒りを買ってしまう一触即発の緊張状態。

状況を打開したのは、途中参加のチャールズ・ウルフ。

彼のおかげでどうにか説明会は終わる。

ファインバーグ弁護士は、ウルフに感謝の言葉を告げる。

ウルフは1枚の紙を手渡し、落ち着いた声で言う「このプログラム方針に反対する」。

ウルフは「プログラム修正を求めるウェブサイト」を立ち上げていた。

浮かび上がる多くの問題

同時多発テロ、被害者、被害者関係者、航空会社、経済、アメリカ全体が大混乱した出来事。

アメリカは移民の国だ、いろんな人が居る。

人種、職種、年収、地位、居住地、年齢、家族構成、関係性など、バラバラな対象者たち。

裕福な大企業役員、低所得な人もいる中で、同一の計算式を用いて算出していいのだろうか。

それに、アメリカは州によって法律が異なる。

ワールドトレードセンターがあるニューヨーク州の法律を適用するのか。

それとも被害者の居住地の州法律を適用するのか。

対象者たちの事情」という見えない壁が立ちはだかる。

刺さった言葉

心に刺さった言葉が2つある。

欲しいのは言葉じゃない、変化だ。

「状況を危惧して対応と処置を求めたが対処されなかった」その事を知ってほしいと訴える男性の言葉。

「ある」と答えたら金を減らすのか?

障害(持病など)はありますか?の質問に対して対象者が言った言葉。

YES なのか、NO なのか、どちらかを選ぶことによって金額が変化する可能性があることを懸念している。

目的を失うと、言葉も失う。

この言葉はセリフではない。

このあたりからストーリーは劇的に変化する。

人も、状況も、環境も、数字も。

現実

良かったのは、映画やドラマなどのコンテンツによくある「ハッピーエンド」で終わらないところ。

救われる人もいれば、救われない人もいる。

特定の法律によって認められなかった人、知りたくなかった事実を苦渋の決断で受け入れる人。

奮闘する弁護士が告げる現実は、希望をねじ伏せる心苦しい現実となった。

観ていてとても苦しくなった。

世界貿易センターヘルスプログラム

救済のために現場に急行した消防士・警察官・救急隊員などのファースト・レスポンダー(緊急対応要員)、現場の修復作業に従事した人たちが、事件から22年経過したのいまも多数亡くなっている。

崩壊したビルの粉塵や有害物質を吸引したことが原因と言われている。

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。
Page Not Found
We can’t find the page you are looking for.
ファースト・レスポンダー 警察官・消防士・ 救急隊員など、事故などの現場に最初に到着する緊急対応要員のこと。
サバイバー 生存者

世界貿易センターヘルスプログラムに登録している人たちの治療費は、2010年に制定された「ジェームス・ザドロガ健康補償法」によって2090年まで保証されている。

ジェームス・ザドロガ健康補償法

救出活動のあとに34歳で病死した警察官の名にちなんだ法律。

9.11テロ事件に起因するとみられる特定疾患を患う救助隊員の医療費を負担するもの。

9.11テロの粉じんとガン発症の関連を否定、米政府報告書
【7月28日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロで世界貿易センタービル(World Trade Center、WTC)が崩壊した際に発生した粉じんや、その後のがれき処理と、発ガン性の関連を検証していた米政府の科学者チームは26日、ガンとの関連を示す科学的な証拠はないと結論付けた報告書を発表した。
米政治風刺テレビ番組の元名物司会者、9・11被害者支援に乗り出す
 【ニューヨーク=黒沢潤】16年間の放送に先月終止符を打った米政治風刺テレビ番組「デイリー・ショー」の司会者で、米人気コメディアンのジョン・スチュワート氏(5…

9.11被害者補償基金(現在)

9.11被害者補償基金は、2001年9月11日のテロ関連の航空機墜落事故またはその直後に行われた瓦礫撤去作業によって身体的被害を受けた、または死亡したすべての個人(または死亡した個人の代理人)に対する補償を提供するために設立された。

2001年から2003年にかけて運営され、計5560人に公的資金から70億ドル超を支払った。

2011年と2019年に再開および延長が決定。

長期の健康被害に苦しむ人々の救済を続けている。

最後に

いまは2023年の3月。

アメリカのテロ事件から22年が経過した。

いまも健康被害に悩まされている人が多く居る。

その人たちのために、ファインバーグ弁護士は寄り添っている。

警察官、消防士、救命士、弁護士、こういった人たちが活躍することのない日々を願いたい。

彼らが活躍すればするほど「平穏な日々」からは遠ざかるのだから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました