ある日、何気なくTikTokを流し見していたら、この動画に出会った。
この動画がアップされたのは7月18日。
今は10月、大型映画館(TOHOなど)では上映情報あがっていないし、もう見られないだろうな・・・と落胆していた。
がしかし、なんと宇都宮のヒカリ座で上映するとな?!
これは行かねば!
宇都宮 ヒカリ座
ここに来るのは10年以上ぶり、前回がいつだったのかも思い出せないほど。
まず、映画館が入っているビルの外観、時代の流れを物語っている(古風)。
そこかしこが薄暗くて、なぜか使えない螺旋階段があったり、独特の雰囲気がある(恐怖)。
エレベーターの扉の前に立つと、すぐ左側のゲームセンターの爆音が響いていて、チラッとそちらを見ると、やはり薄暗い(動揺)。
なぜかトイレがめちゃめちゃキレイ、改装したのかな?トイレへ行く通路や出入り口は古いまま、温度差がすごい(驚愕)。
TOHOなどのようにチケットを先に買って座席を選んでおこう、そう思って上映時間よりかなり早く着いた。
エレベーターで目的の階につき扉を抜けると、すぐ右手にチケット売り場、しかも人がいる、その背後に券売機、ラーメン屋さんにあるような券売機。
後から知ったが、事前に座席を選ぶのではなく、上映間近になってスクリーンの扉が開いたら「好きな席を選ぶ」というシステムだった、むむ、古風だな。
なに観るんですか?
ボイリングポイントです
上映開始はまだまだ先、今日は平日だしお客さんもそんなに来ないだろうから、上映間近に来てもらって大丈夫ですよ。
では上映間近になったらまた来ます。
映画館周辺を探検、近くにあるメガドンキを彷徨うも、重度の方向音痴なので出られなくなってプチパニック、最初に入った入口と違う出口から出て、景色が違ってプチパニック。
上映間近になって映画館へ、先ほどのスタッフさんとは別の人が対応してくれたが、なぜか1人ですべての業務をこなしていて慌ただしくて大変そうだった。
座席に段差はなく、すべての席がスクリーンを見上げるようになる。
例えるなら、中学校の体育館で映画鑑賞している感じ。
座席はクッション性が高くて座りやすいけど、前列との距離が近いので足を組みかえると蹴ってしまうので御注意を。
上映 いつまで
公式サイトに上映シアター一覧がある。
すべて調べて上映の有無を確認したので書き出してみる。
上映中・上映間近
- <岩手県> フォーラム盛岡 2022年10月21日(金)より公開
- <埼玉県> 深谷シネマ 2022年10月23日(日)より公開
- <富山県> 富山ほとり座 2022年10月15日(土)~21日(金)まで
- <長野県> 上田映劇 2022年12月23日(金)~29日(木)まで
- <兵庫県> 宝塚シネ・ピピア 2022年10月21日(金)より公開
上映終了
- 千葉県 シネマ旬報シアター
- 栃木県 ヒカリ座
- 広島県 シネマ尾道
あらすじ
一年で最も賑わうクリスマス前の金曜日、ロンドンの人気高級レストラン。
その日、オーナーシェフのアンディ(スティーヴン・グレアム)は妻子と別居し疲れきっていた。
運悪く開店前に衛生管理検査があり、評価を下げられ上に次々とトラブルに見舞われるアンディ。
気を取り直して開店するが、予約過多でスタッフたちは一触即発状態。
そんな中、アンディのライバルシェフ・アリステア(ジェイソン・フレミング)が有名なグルメ評論家サラ(ルルド・フェイバース)を連れてサプライズ来店する。
さらに、脅迫まがいの取引を持ちかけてきて…。
もはや心身の限界点を超えつつあるアンディは、この波乱に満ちた1日を切り抜けられるのか……。
90分ノーカット
まず驚いたのが、映画が始まってからずっとノーカットということ。
90分間、脅威のワンショット、一発撮り。
まず、主人公のオーナーシェフの家庭事情のゴタゴタから始まる。
緩やかに進んでいく流れ、まだ緊張感はない。
開店前に多発するトラブルにスタッフ全員が慌てふためく様は、ちょっぴりドキドキする。
こういう裏側を見る・知る機会がないので、なにかしらのトラブルがあっても臨機応変に動くスタッフさんたちの連携に感心する。
マンガ:フェルマーの料理
お気に入りのマンガで「フェルマーの料理」がある。
このマンガのテーマは「数学と料理」。
主人公の男子高校生:北田岳は数学者を目指していたものの夢破れ、天才シェフと評される朝倉海との出会いを機に料理の道へと進むことになった。
料理は未経験ながら、数学的思考を武器に周囲の人々を驚かせるような料理を作り出し、料理人として成長していく岳の姿を描いたグルメ漫画。
まったく繋がらない数学と料理という組み合わせに、毎回ドキドキしながら読んでいる。
作中では大忙しの厨房が描かれていて、まるで戦場のようだ。
作業内容が異なる大勢のスタッフが「入店・食事・退店という限られた時間内で最大限にもてなして満足してまた来たいと思ってもらえる」という1つの目的のために動いている。
- 席に着く
- メニューを決めて注文する
- 料理が届くのを待つ
- 食事をする
- 会計して退店する
お店の系統やジャンルによって異なるが、これら一連の流れが30~40分で済んだり、コース料理だと2~3時間かかったりする。
限られた時間内で1人1人の客をもてなして満足させて笑顔にさせるのだから、料理人というより芸術家だと思う。
さて、映画では開店前に全員集合し、簡単にミーティングをして闘魂注入。
今日は1年で1番にぎわうクリスマス前の金曜日、予約客でいっぱい。
女性支配人:ベスは、お店の公式インスタに集合写真をアップする。
小さなスマホ画面にギュウギュウに集まったスタッフは、みな笑顔でやる気に満ちている。
気付いたところ1
イギリスという国はいろんな人がいる、肌の色も言葉も異なる人がたくさんいる。
1人1人、本当に違う。
人によって、なにが正義で、どんな事情があって、どういった心情なのか、違う。
映画「エルヴィス」の感想記事で「ビジネス」という文章を書いた。
人間関係とビジネスについて、感情と感情の違いを書いた。
店舗運営という大きな枠のなかに、いろんな仕事がある。
シェフという職人、シェフの中にも肉料理担当とか、デザート担当とか、かなり細かく分かれている。
ホールスタッフもそう、バー担当、給仕担当など、いろんな仕事がある。
スタッフ全員の「仕事」が異なるので、理解し合い歩み寄るのは案外難しいのかもしれない。
気付いたところ2
この映画には、現実社会で抱えるさまざまな問題をうまく取り入れている。
人種差別、性差別、人間関係、心身問題、ハラスメントなど、言わば「気まずい雰囲気」を少しずつ間をおきながら焦点を当てているので、薄れることなく脳裏に焼きつく。
多発するトラブル、少しずつ蓄積していくストレス、本当に些細なことがキッカケで感情が爆発する。
少しずつ温度が上がり、一気に沸点まで急上昇、まさに沸騰だ、感情の沸騰。
この映画は常に誰かを追いながら撮影しているので、なんていうか、自分が幽霊になってスタッフの背後にピッタリと張り付きながら賑わうレストランを徘徊して見学している気分になる。
映画というよりドキュメンタリーだ。
気付いたところ3
オーナーシェフがたびたび持ち場を離れるけど、あれっていいのかな?って疑問に思った。
持ち場を離れるたびに、自分の仕事を「誰か」が「代わりにやる」ことになるのに。
オーナーシェフという重圧と自身の心情が入り混じってパニックを起こしているようにも見える。
何かに特化した人は、それ以外が不得意という人が多い。
だから突出しているのだろう。
例えば、料理を作らせたらピカイチなのに、雑務や事務仕事は苦手だったり。
勉強では成績優秀なのに、人の気持ちがわからなかったり。
すべてが満遍なくできるのなら、それはオールマイティーなだけで突出していない。
各スタッフ、自分が持つ正義・使命感・立場、仕事の責任・役割、自分が置かれている立ち位置、すべて異なる。
ただ、その想いがうまく交わらないのが現状。
理不尽な客に振り回されたり、思いもよらないアクシデントが発生したり、まさに戦場だ。
自分がしていることが、誰かを喜ばせて幸せになる、そういう想いで仕事をしている。
マンガ:あかね噺
お気に入りのマンガで「あかね噺」がある。
その身1つと噺だけで全てを表す、話芸の極致「落語」。
この究極にシンプルなエンタメに魅せられた主人公の女子高生:朱音が落語家を目指す話。
作中で「気働き」という単語が出てくる。
これがとても心に響いた。
相手をよく見て、相手の些細な言動の意味を思案し、相手を大切に想い、相手の喜ぶことを考えて気を回して動く。
それが気働きだ。(気配り・心配りともいう)
相手を想うこと、すなわち愛情だ。
人には愛情があってこそ、心が豊かになる。
昨今、サブスクだのタッチパネルだのと「商品やサービスを提供するだけ」が増えていて、「店員」と「客」がコミュニケーションを取ることが希薄だ。
人をよく見て、その人に合わせた仕事をするよりも、ただ仕事を提供するだけの方が断然ラクだし簡単だし、なにより人件費が要らない。
金を節約するには、まず人を減らす。
機械と客、そういう関係が多い。
それで成り立つ仕事もあるし、それに移行しつつあるが、なにせ心が無い。
商品やサービスには、その先に必ず「人」がいて、さらに先には「心」がある。
人からコミュニケーションを取ったら何が残るだろうか。
気付いたところ4
衛生管理検査のシーンで、手洗い場所や冷蔵庫内の温度など、飲食店が重視する衛生面が映し出される。
アクシデントで戸惑うシェフたちが顔を触ったり頭を掻いたりするけど、その後は手洗いしてないけど、いいのかな?
オーナーシェフと隣同士で料理している副シェフ、この2人が料理を仕上げているけど、料理の真上でしゃべり続けている、いいのかな。
カウンターに出される完成した料理、それを各テーブルに配るホールスタッフも、なにかアクシデントがあると料理の上でしゃべってるけど・・・。
デザート担当が作ったレモンクリームの味見をするオーナーシェフ、あまりの美味しさに試食で使用したスプーンで何回も食べてるけど、それは試作品なのかな、客に出すレモンクリームは新たに作るのかな。
実際にあるレストランを4週間貸切で撮影したとのことだが、あの店内構造だと調理場の会話は聞こえるんじゃないかな?
女性支配人が「(オーナーシェフの)怒鳴り声がホールに響くからやめて!」と注意するシーンがあるから、実際に聞こえてるんだろうな。
店舗スタッフが頻繁に「客が使う出入り口」を使ってるけど、映画だからそういう構成なのかもしれないけど、あれは客が気になって食事に集中できないだろうなー。
エプロンしてる人・していない人の違いはなんだろう?
最後に
ずっと時間を忘れて見入っていた。
どういった終わり方をするんだろう?
ドキュメンタリーのように、レストラン内を幽霊になった目線でずっと観ていると、その瞬間が来る。
そうくるか、という終わり方でギョッとした。
エンドロールが流れ始めて、ずっと続いていた緊張からの開放。
やっと深く呼吸ができた、そんな感じがした。
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