映画館に行く際、必ずすることがある。
「フライヤーのチェック」 ※ フライヤー = チラシ
映画館によって上映作品が異なるので、どんな作品が上映予定なのかをチェックする楽しみ&コレクション化している。
大手配給会社系列では「東宝」「松竹」「東映」の3社が古くからの系列となり、全国展開を行なっている。
東宝 | TOHOシネマズ | TOHOシネマズ株式会社 |
松竹 | MOVIX、丸の内ピカデリー、東劇 | 株式会社松竹マルチプレックスシアターズ |
東映 | Tジョイ、バルトなど | 株式会社ティ・ジョイ |
以前MOVIXさいたまで「RRR」を鑑賞したとき、いくつかのフライヤーを持ち帰った。
そのフライヤーの中に「ウィ・シェフ」があった。
鮮やかな黄色の背景の中に、いくつもの素敵な笑顔が花のように咲いている、印象的なフライヤー。
この映画の公開日を心待ちにしていた。
あらすじ
フランス本土最北端にある港町、ダンケルク。
料理番組「ザ・コック」で有名なリナ・デレトのレストランでスーシェフとして働くカティ・マリー(オドレイ・ラミー)は独立に向けて開業資金を貯めていた。
しかし、味より見た目を優先するリナは、カティの自慢の品を勝手にアレンジし、ふたりは大ゲンカ。
捨て台詞を吐いてレストランを飛び出したカティだったがどこも門前払い、ようやく見つけたのは移民支援施設の住み込み料理人の仕事だけだった。
給料は月1,450ユーロで、住む部屋も確保できる。
半年の我慢だと親友のファトゥ(ファトゥ・キャバ)にたしなめられて、カティはしぶしぶ働くことにした。
この施設では様々な事情を抱えて世界中から集まった少年たちが寮生活を送っている。
18歳までに職業訓練学校に就学できないと強制送還されるため、施設長のロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)は彼らを連れて行政や学校に日参し、住み込み教師のサビーヌ(シャンタル・ヌーヴィル)も世話するだけで手一杯。
キッチンは不衛生で、食料庫には缶詰のラビオリが並ぶだけのお粗末さだった。
児童養護施設で育ったカティは、自分のレストランを持っために料理界を生き抜いてきた。
ジブリルとのトラブルで初めて移民問題に目を向け、少年たちが命懸けでフランスへ来たこと
や、残された家族の不安に想いを馳せるようになった。
「子どもたちを守る責任がある」と諭すロレンゾの本気は、自分本位で突っ走ってきたカティの心を動かした。
自分が持てるすべての知識と技術を伝え、少年たちを一流の料理人として育て上げる。
少年たちも料理のおもしろさに目覚め、故郷の自慢の味を再現して友達と紹介し合うようになった。
フランス語がちょっと苦手な少年たちと、ストイックすぎて人づきあいが苦手なベテランシェフのカティ。
目を輝かせて働く少年たちは、カティの生徒であり宝物になっていく。

キャスト
俳優 | 役名 | 人柄 |
オドレイ・ラミー | カティ・マリー | 一流レストランのシェフとして精力的に働くが、シェフ:リナとケンカをして衝動的に店を辞める。 |
フランソワ・クリュゼ | ロレンゾ・カルディ | 移民の少年たちの自立支援施設の施設長、子供たちへの愛情はとても深い。 |
シャンタル・ヌーヴァル | サビーヌ | 笑みを絶やさずユーモアに満ちた太陽のような女性、考古学者を夢見ていたが親に否定されて施設職員になる。 |
ファトゥ・キャバ | ファトゥ | 女優を目指しているがCM1本以降の仕事は来ない、カティの親友。 |
ヤニック・カロンボ | ギュスギュス | いつも明るくて前向きな少年。 |
アマドゥ・バー | ママドゥ | 故郷で暮らす母と大の仲良し。 |
ママドゥ・コイタ | ジブリル | サッカーが得意でプロ選手を夢見る少年。 |
アルファ・バリー | アルファ | コートジボワール出身の少年。 |
ヤダフ・アウェル | ヤダフ | 故国エチオピアにいたときは優秀な学生で大学に入るために勉強していた。 |
ブバカール・バルデ | ブバカール | 流暢に料理の説明をする天性の才能を持つ少年。 |
実在するシェフをモデルにしたコメディ
フランスは移民大国が抱える深刻な問題がある。
UAM(同伴者のいない未成年者)と呼ばれる移民の子供たちを調理師として育成する社会活動。
実在するシェフ:カトリーヌ・グロージャンが始めた取り組みは、子供たちがフランスで暮らすために必要な職業適性能力資格(CAP)の取得が目的。
料理の腕さえ身につけば、フランスで安定した生活を手に入れられる。
そんな強い信念で子供たちを導くシェフをモデルにしたのが、カティ・マリーだ。
なお、カトリーヌ・グロージャンは、少女時代のカティに料理を教えるシェフとしてカメオ出演している。
上映映画館
移民大国フランス
スポーツに興味ナシの私が数年前に見たサッカーワールドカップ中継。
たしか……真夜中&早朝の試合が多く寝不足者が続出したときのワールドカップ、2018年かな?
今まで海外サッカーを一切見たことない私。
フランスの試合を見て驚いた。
フランス代表選手に肌が黒い人が居る!と。
ここで初めて気付いた、フランスは移民が多いのだと。
フランスで移民とされるのは、外国生まれで外国籍を持ちフランス国内に在住する人のこと。
その数は総人口の10.3%、約700万人ほど。
その歴史は長い。
フランスでは出生率が低下し、19世紀半ばから兵士や労働力が不足し、移民の受入を開始。
さらに第一次世界大戦後には、戦死者の増加や出生率の低下によって人口が急激に減少し、移民受入に積極的になった。
移民 | 比較的長い間、自国以外の国に定住する人々 |
難民 | あらゆる迫害や戦争・紛争から逃れるため仕方なく自国を離れた人々 |
亡命 | 仕方なく自国を離れる″行為”のこと |
では、なぜ亡命先にフランスを選ぶのか。
それは、未成年であれば国籍を問わずどんな子供でも無条件に保護され、最低限の生活の保障と教育を受けることができるからだ。
成人年齢である18歳を超えるまでに正式な滞在許可が下りなければ、即日強制送還の対象となってしまう。
未成年難民にとって命がけの亡命なのだ。
文化の違い
移民が多いということは、あらゆる国の文化や風習が「人の中」に存在している。
パッと見ではわからない、その人が積み重ねてきた生き方が在るのだ。
立場的に男が強く女が弱い地域で育った人は、女性からの指示に従わない。
これは、どちらが悪いのか、ということではない。
環境と文化の違いであって、間違いではない。
それらの価値観を擦り合わせて、言い方や言葉遣いを変えるなど工夫をした上でちょうど良い距離感で、お互いの違いを尊重して多様性を認めるのがベストだと思う。
自立支援施設長:ロレンゾ
施設の敷地内にはグラウンドがある。
サッカーコートといえない、設備や整備も整っていないグラウンド。
そこで子供たちはサッカーを楽しんでいる。
施設長ロレンゾは、子供たちと一緒にサッカーをしている。
プレイ中のロレンゾを呼ぶカティ。
カティの呼ぶ声に振り向いて近付くロレンゾ。
ん???
ロレンゾ、足を引きずっているぞ?
老体のロレンゾと10代の若者たち、見えない壁(若さ)をうまく表現している。
以降ロレンゾは、松葉杖を使用しながら、子供たちのために忙しなく意欲的に動く。
これはあとから知ったのだが、ロレンゾの松葉杖は「実際のケガ」だそう。
アキレス腱断裂による全治2ヶ月の重症。
監督の熱望によりロレンゾ役を続投、この作品にかける熱意を感じる。
ロレンゾ役:フランソワ・クリュゼ
どこかで見たことあるような気がする……どこで見たのだろう。
映画「未来世紀ブラジル」の主役を務めた人?
海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のハイ・スパロウ?
いや、どちらも同一人物:ジョナサン・プライスだ。
あれこれと思考を巡らせていると、たどり着いた。
「最強のふたり」日本公開2012年9月。
首から下が動かない大富豪:フィリップだ。
厨房は戦場
厨房は戦場だ。
限られた時間内で、料理とサービスをもって来客をもてなし、また来店してもらえるように送り出す。
厨房ではシェフを筆頭に、大勢のスタッフがせわしなく動き回っている。
シェフ | chef | フランス語 | 総料理長 |
コック | kok (cook) | オランダ語 | 料理人 |
キュイジーヌ | cuisince | フランス語 | 台所 |
以前観た「ボイリングポイント」の記事の中で「マンガ:フェルマーの料理」に触れた。
作業内容が異なる大勢のスタッフが「入店・食事・退店という限られた時間内で最大限にもてなして満足してまた来たいと思ってもらえる」という1つの目的のために動いている。
料理人と軍隊
料理人というより、軍隊の方がしっくりくる。
シェフの命令は絶対、返事は「ウィ、シェフ」のみ。
異様なまでの忠誠心は、以前観た「ザ・メニュー」と同じ。
シェフが「白」といえば、黒いものも白になる。
シェフを筆頭に、各担当者たちと共に料理という芸術を作りあげていく。
彼らはチームだ。
シェフ | 総料理長 | 厨房の総責任者 | 1店舗につき1人 |
スーシェフ | 副料理長 | シェフの右腕 | シェフが不在のときは代理を務める |
ロティスール | 肉料理担当 | ||
ポワソニエ | 魚料理担当 | ||
ソーシエ | ソース作りと主菜の仕上げ担当 | ||
パティシエ | デザート全般担当 | ||
ガルド・マンジェ | オードブルと冷たい前菜担当 | ||
プロンジュ | 洗い場担当 |
料理
肉、魚、野菜。
たくさんの食材たちが、皿の上で彩られる。
その鮮やかさは、まるでキャンバスのよう。
美しい芸術、食べられる芸術。
1枚の皿の上に、物語があるのだ。
どんな味がするのか、味の組み合わせによって新たな味が出てくる。
ビジュアルを何に見立てているのか、何を表現しているのか。
絵画のような芸術、それが料理。
この映画には、美しい料理が登場する。
見ていてお腹が空いてくる。
とても美しく、どれも美味しそう。
ビーツ
この映画の象徴的な料理。
作中ではカティのオリジナル料理である。
様々な色の、様々な長さのビーツが、皿の上に並ぶ。
ビーツ |
地中海産の野菜、ヒユ科 |
砂糖の原料になる「テンサイ」の仲間 |
食べ方:生食、茹でる、焼く |
ボルシチに欠かせない野菜 |



自家栽培
以前書いた「ザ・メニュー」の記事で『鮭は切り身で泳いでいると思っている子供がいる』と書いたことがある。
この野菜、調理前はどんな形をしているのだろう?
どのくらいの大きさ?何色をしている?葉っぱの形は?
いつも食べている食事、目の前の料理に使われてる食材がどのように育っているのか、考えることもないだろう。
「料理」がどのような「過程」と「経緯」を経て自分の目の前に「有る」のか。
特に何も考えず目の前の料理を平らげるだけの毎日、それを変えたのはカティだ。
自分たちが作る料理の素材を、自分たちで作る。
カティと子供たちの取り組みだ。
どの野菜が、どのように育ち、どう収穫し、どう料理するのか。
生物の育成にかける手間暇を知れば、真心と感謝が生じる。
雑に扱うことなく、日々感謝して、食するようになる。
食事は、体だけでなく心の成長にも繋がっている。
大人の役割
子供たちに安心して「明日が楽しみ」と思える未来を作るのが大人の役割だ。
未来を導く道しるべにならなければいけない。
子供たちに安心して笑顔で過ごせる未来を整えなければならない。
言葉の影響力は想像以上に大きい。
特に「大人が発する言葉」は影響力が強大だ。
かける言葉1つ、そのひと言で相手の未来は良くも悪くも変化してしまう。
言い方ひとつで、相手を喜ばせることも傷付けることもできてしまう。
なるべく言葉を間違えないように、大人はよく考えてから発言した方がよい。
最後に
この手のハートフル作品でありがちなのは、万事ハッピーエンド。
誰も傷付かず、誰もが幸せになるという、いわばファンタジーな終わり方をする。
その点、この作品はとても現実的な構成をしている。
それが、フランスにおける難民問題を「現実進行形の問題」として浮き彫りにしている。
子供たちの笑顔で何度か涙した。
涙もろいお年頃なのね。
年齢を重ねていくと、涙もろくなる。
それはなぜなのか。
人生の酸いも甘いも経験したから、あらゆる出来事への共感力が強いのか?
と思いきや違う。
人はなぜ加齢と共に涙もろくなるのか。
それは、感情を司る前頭葉の衰えによるもの。
つまり、脳の老化。
なるほど(遠い目)。
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